「どうしてあんな打球が...」
オリックス頓宮裕真は山川穂高級の大砲だ

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「そのスイングでどうしてあんな打球を......」と思わせるほどの軽いスイング。持っているパワーをすべて使い切ることなく、ちょうどホームランになるぐらいの出力でスイングする。それでもしっかりバットを振り抜いているから、打った瞬間、スタンドインとわかる堂々のホームラン。ルーキーの技ありの一発に、スタンドから拍手が沸き起こる。

 そして頓宮のもうひとつの見せ場は、プロに入ってからコンバートされたサードの守備だ。深いポジショニングは、肩に自信があるというなによりの証拠。それに三遊間への打球のスタートもなかなか反応が鋭い。

 181センチ98キロの巨体でありながら、動きが軽やかで、柔軟な身のこなしがさまになっている。学生の時も、本職の捕手だけでなく、一塁をこなし、何試合か三塁も守ったことがあったと記憶している。どのポジションでもやってのける運動神経のよさが、長距離砲・頓宮の大きな"付加価値"と見ていた。

 三遊間の打球を捕ってから投げるまでの一連の動きにぎこちなさがなく、下半身リードで上半身を動かせるメカニズムを身につけているようだ。

 ある日の午前中の内野守備練習。ファーム組と一緒にノックを受けた頓宮は、練習のあと、捕球、送球時のフットワークを同じルーキーの太田椋から教わっていた。太田はドラフト1位とはいえ、高卒の年下だ。そんなことはお構いなく、「いいものはいい」と教えを乞い、自分の技術を高めようとする姿勢に感服した。

 紅白戦では3割以上をマークしていた頓宮だったが、対外試合では結果を残せずに苦しんでいる。正念場はこれからのオープン戦だろう。試され、探りを入れられ、プロの洗礼を浴びることもあるだろう。それに疲れの影響もジワジワと忍び寄ってくる頃でもある。

 ここで踏みとどまれるのか、それとも......いずれにしても頓宮は、山川穂高級の"和製大砲"になる器だと見ている。パンチパーマの風貌もいいが、その高い技術力にも注目してほしい。

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