与田剛監督が描く根尾昂の未来像「二刀流の可能性はゼロではない」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sportiva

── 優先順位、という言葉が出てきた監督の心はどこにあるんですか。

与田 私自身、そこまで真剣に考えない時期があったんです。何とかなるんじゃないかという傲(おご)り、甘えもありましたし、真剣味が足りなかったとも思います。ただ、現役のときにこういうことを言われて、そうだよな、と思って実行できる選手は誰もいないはずなんです。だからこその現役なんですよね。辞めてからじゃないとわからないことがちゃんとわからないからこそ(笑)、現役としてプレーできるということもあるんです。

 自分を素直に見て、と言いましたけど、全部を素直に見られるようじゃ、たぶんこの世界でやっていけないんですよ。「うるせえ」「冗談じゃねえよ」「オレはこれで大丈夫だ」という気持ちがあるから、現役として戦っていけるんだろうし、優先順位なんか考えられるはずがないよな、という気持ちもあります。それでも、選手たちには頭の片隅にでも「優先順位を考えて準備してほしい」という思いがあります。

── 監督は現役時代、何人の監督の下でプレーしたか、数えたことはありますか。

与田 ありますよ。6人かな。星野仙一さん、高木守道さん、江尻亮さん、近藤昭仁さん、上田利治さん、野村克也さんの6人です。

── その6人の監督から学んだことで、監督として持っていなくちゃならないものは何だと思っていますか。

与田 それは、チームスタッフが宝だという考えです。もちろん選手も含めて、スタッフがいるからこそ、監督でいられるということを考えておかなければいけない。私は選手として3回、クビになりました。3回もクビになった監督なんて、過去にも未来にもいないんじゃないですか(笑)。星野監督がよく「野球界にとって子どもは宝なんだ」とおっしゃっていましたが、今、こうして監督としてユニフォームを着てみると、選手、スタッフが宝だ、ということを実感するんです。

 監督業は人の運命を大きく変えてしまうという話をしましたが、私がドラゴンズの選手、スタッフの人生を背負って、守らなければいけない。その人たちの人生を変えてしまいますからね。去年の11月1日に監督として、選手、スタッフと初めて対面したとき、ひとりひとりの顔を見ていたら、ああ、優勝すればみんなの大喜びする顔が見られるんだろうな、という思いが沸き上がってきました。監督は、それを叶えるためにいるんですよね。

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