広島・山口翔を沢村賞コーチが絶賛。「2年目のブレイク」再現なるか (2ページ目)

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「一軍の首脳陣には『高めに投げるならいらない』という雰囲気が常にあります」

 そう語る山口だが、昨年は21イニングで16四死球を与えてしまった。二軍とはいえ、プロでこの数字は明らかに多い。山口は熊本工3年の春に甲子園を経験しているが、初戦で智弁学園(奈良)に9点を奪われ完敗。この試合でも押し出しを含む8四球と制球難を露呈して自滅した。それだけにこのキャンプでは制球力を磨くことが重要なポイントになっているが、やはり高めに浮くボールが目につく。

「じつはリリースポイントを探っているところなんです。今までが前すぎたので、どうしても叩きが弱くなり、うまくボールに力を乗せることができなかった。少し顔寄りに戻したというか、前すぎず、近すぎずのポイントを探りながらやっている感じです」

 キャンプ2日目には早くも打撃投手として打者と対峙した。相手は昨年25本塁打のサビエル・バティスタ。山口はワインドアップからストレートのみ39球を投げ込んだが、死球を含む15球がボールゾーンと、制球が定まらない。空振りを1つ奪ったが、高めに浮いた球は軽々と持っていかれ、この日は計7本の柵越えを許した。
 
山口について、昨年は二軍投手コーチとして指導し、今季から一軍担当となった佐々岡真司投手コーチが指摘したのは、制球についてではなく、投球リズムの悪さだった。

「単調でタメがなかった。いくら150キロの球があっても、あれでは打者もタイミングが取りやすくなる」

 そう厳しく評価した佐々岡コーチだが、2年目のブレイクを狙う山口にとってはこの上ない味方でもある。佐々岡コーチは、山口が制球を気にするあまり、本来のスケールを失わないように細心の注意を払っている。

「こじんまりするのではなく......それでもすべての質を上げて、投手としてレベルアップしてもらわないと」

 そして佐々岡コーチは「カーブの投げ方で真っすぐを投げれば、低めにいい球がいくから」と山口に何度も言い聞かせている。そんな佐々岡コーチに山口も全幅の信頼を置いている。

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