斎藤佑樹が30歳で原点回帰。「楽しむ自分を見てはしゃいでほしい」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田口有史、スポルティーバ●写真 photo by Taguchi Yukihito,Sportiva

── なるほど......でも、失敗を気にしないでやっていたときのほうが、持ち前の感性を生かせていたということはありませんか。

斎藤 失敗を解釈しないで来てしまった18歳までは、アスリートとしてはすごくよかったのかもしれないし、感性を大事にしたからこそ、結果を出せたのかもしれません。でも、それを踏まえて人として考えたとき、失敗を解釈できなければ後に何も残らないんじゃないかと思うようになったんです。だから今はいろんな失敗を経て、それをいちいち解釈して、人間的な成長に生かしていけたらな、と思っています。

失敗を解釈してしまうことが勝つことの足かせになっている

── 今は勝つということの難しさは感じていますか。

斎藤 感じています。

── どういうふうに難しいと感じているんですか。

斎藤 何が難しいんでしょうね......そこは技術じゃないと思うんです。ただ、さっきの話と矛盾してしまいますけど、失敗を解釈してしまうことが足かせになっている部分もあるんじゃないかと思います。

── たとえば去年、ノーヒットに抑えていたのに8つの四死球を出して、勝利投手の権利を手にする4回ツーアウトで交代となった試合(2018年4月7日、東京ドームでのロッテ戦)、あの試合は今、どう解釈しているんですか。

斎藤 あれこそ、まさに勝つことを難しく考えてしまった試合だったと思います。勝っていい試合だったと思いますし、失敗を恐れずにスイスイ投げていたら何でもなかったと思うんです。スライダーを真ん中に投げてカウントを取って、軽く真っすぐをピューンと行って......深く考えずにいけばよかったのに、あえて深読みして、きわどいところ、きわどいところを突いて歩かせてしまった。最近の僕にありがちなパターンでした。

── 今年、同じような局面になったら、力を抜いたピッチングができる感覚はありますか。

斎藤 そこはわかりません。僕が、人の喜ぶ顔を見たいというスタイルで野球をやれていれば、そういうピッチングはできると思います。でも勝ちたいとか、防御率とか勝ち星とか、そういうものをどうしても意識してしまう。ただ純粋に、目の前のバッターを抑えて、それを見て喜んでくれる人がいる、というところを考えることができれば、楽しく、のびのびと野球ができるんじゃないかと思っています。

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