根尾昂はすべてをプラスにする天才。キャンプで二軍スタートも問題なし

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 昨年の12月、根尾昂(あきら)に大阪桐蔭での3年間についてじっくりと話を聞く機会があった。その時、なにより感心したのは、ぶれない姿勢、折れない強さ、隙のない佇まい......高校生らしからぬ内面だった。

 話の中で、「野球をしていて焦ることはないのか?」と尋ねると、根尾は一瞬考え「あるとしたらケガをした時くらいですね」と返ってきた。

 高校時代の根尾のケガといえば、1年の冬に腰に違和感が出たこと、3年春のセンバツ大会直前の練習試合で右手の指を裂傷したことが頭に浮かぶ。なぜこの話を思い出したかといえば、自主トレ期間中に右ふくらはぎの違和感で、キャンプは二軍からのスタートになったというニュースを耳にしたからだ。

自主トレ中に痛めたふくらはぎの影響でキャンプは二軍スタートとなった根尾昂自主トレ中に痛めたふくらはぎの影響でキャンプは二軍スタートとなった根尾昂 ただその一報を知った時、根尾の落ち込んでいる姿は想像できなかった。おそらく、「しまった」というよりも「いい経験ができた」と。

マイナスと思えるアクシデントさえプラスにとらえ、必ず次につなげる。これも高校3年間を取材してきたなかで感じたことだ。打つこと、守ること、投げること......どれをとっても超一流の素材であるのは間違いないが、どれだけ高い能力を備えていても、思うように力を発揮できずに消えていくのがプロの世界だ。しかし根尾は、アクシデントの中でも自分のペースで体を鍛え、技術を磨いて次につなげてきた。そこにメンタルの強さを実感するのだ。

 入団後も自主トレから大きな注目を浴びてきたが、いくらマスコミに追われようが、ファンに囲まれようが、それがプレッシャーとなって崩れていく姿は思い浮かばない。

 3年前の春もそうだった。大阪桐蔭に入学する前から"飛騨の怪物"の呼び名とともに"根尾昂"の名前は熱心な高校野球ファン、野球関係者たちの間ですでに浸透していた。注目度の高さでは、入学時の中田翔(現・日本ハム)を遥かに超えていた。だが、根尾にとっては、高校入学時の経験がしっかり今に生かされているに違いない。

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