広島の新人・林晃汰は練習の虫。一軍でホームラン1本の恩返しを誓う (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sportiva

 高校通算49本塁打――入学直後の1年春から出場し、これだけのパワーを持った選手とすれば、決して驚くような数字ではない。ただ、智弁和歌山の野球部は1学年10~12人程度。そのため投手の人数の兼ね合いもあり、練習試合を多く組めない事情がある。また林自身、2年春に腰を痛め、2年夏の甲子園後は右ヒジを手術するなど、離脱の時期が長く、そのなかでの49本である。

 1年の頃からそれなりにとらえた打球は、角度がつけばスタンドインするイメージがあった。飛距離はおそらく、昨年のドラフトで指名された高校生ではナンバーワン。中学2年の夏にチームの指導者から「ボールの下にバットを入れるように」とアドバイスを受けたところ、打球に角度がつき、驚くほど打球が飛び始めたという。

 智弁和歌山では「とにかく強いスイングや!」と繰り返す高嶋仁(前)監督の指示を実践。飛距離はさらに増加した。3季連続出場の甲子園でも2年夏、3年春にそれぞれ1本塁打を放つなど、全国の舞台でも長打力を見せつけた。

 また、本塁打の約半分がセンターから左方向。これも林の大きな持ち味で、これだけ逆方向に飛ばせる高校生は記憶にない。甲子園で記録した2発も、ともに左中間だった。そのことについて林はこう説明する。

「引っ張って大きい打球を飛ばすのも気持ちいいんですけど、センターから左にしっかり打てた時の方が次につながる。そこはいつも意識していました」

 ドラフト直前、「4位か5位指名ぐらいかな......」と話したことがあったが、実際には広島から3位指名。猛練習で選手を一人前に叩き上げる広島は、超素材型の林には絶好の球団だと思った。

 ドラフト後、智弁和歌山の秋の大会を観戦していると、スタンドで前監督の高嶋と広島の関西担当スカウトである鞘師智也(さやし・ともや)と話をする機会があった。1位で担当地区の小園海斗(報徳学園)を指名していた鞘師は、林の指名について次のように語った。

「ここ(3位)で獲らないと、次に指名が回ってくるのは4巡目の最後。そこまでは残ってないと判断しての3位指名。僕的には会心でした」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る