2019.01.17

経験豊富で欲のない人。元名参謀が語る
「ヘッドコーチに必要な資質」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Koike Yoshihiro

 ただ、こうした”腹芸”も監督より年上だったからできたことだ。年下ではやはり難しいと私は思っている。ヘッドコーチというのは、時に監督に「ノー」と言える存在でなければいけない。煙たがられる存在になろうが、イエスマンでは務まらない。

 それに性格の部分も、監督と対照的ならなおさらいいだろう。気性が激しく直感で動く監督なら、温和でじっくり物事を考えるタイプのヘッドがいいだろうし、逆に地味で口数の少ない監督なら、積極的に選手に指示を出せる行動的なタイプの人間がいいだろう。そうした違いがあれば、自ずと発想も違ってくる。衝突する危険もあるが、違う発想を持つということは、それだけ戦い方にも幅が出るというものである。

 ちなみに、今季の巨人はヘッドコーチを置かないらしい。復帰する原辰徳監督の意向らしいが、よほど選手把握に自信があるのだろう。ただ実績が豊富な分、周囲が遠慮して本音を言わず、正しい情報が耳に届かず、孤立してしまう危険もある。そんななかでどんな采配を見せるのか注目である。

 また中日は与田剛が新監督に就任したが、ヘッドコーチに伊東勤を据えた。言うまでもなく伊東は、西武、ロッテで監督を務めるなど実績は申し分ない。経験も引き出しもある伊東が、新人監督の与田をどこまでフォローできるか、あるいは我慢できるか……少々の衝突はあっても、意見をぶつけ合っていけばいいコンビになるはずだ。

 最後に、ヘッドコーチとして最も重要な要素をお教えしたい。それは「欲のない人」である。野心家で、次期監督を狙おうとしている人間がヘッドコーチに就いたら、監督も気を許して戦えないだろうし、チームもギクシャクするに違いない。

 コーチ経験が豊富で、チーム全体に目が行き届き、監督のフォローもしっかりできて、そして欲がない。それが理想のヘッドコーチというわけだ。得てしてそんな人ほど、一見するとたいして仕事をしていないように映る。だが、そういうヘッドのいるチームは、ちゃんと順位は上の方にいるものだ。

(つづく)

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