「落ちるところまで落ちた」ドラ1。寺島成輝が探す浮上のきっかけ (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そして石井コーチは、秋季キャンプで取り組んだことを具体的に説明してくれた。

「踏み出した時に軸足がしっかりとプレートを蹴って、力を前に伝えることですね。蹴る足が先に離れてしまうと、上体が突っ込んでしまいます。そうなると下半身がほどけ、右ひざも割れてしまいボールに力が伝わりません。その時に指先でコントロールできてしまうので、それが悪い癖となって、なかなか抜けなかったですね。下半身をしっかり始動させてから、上体を乗せていく。秋のキャンプではそこを徹底的に見直してきました。

 神宮での阪神戦も悪くはなかったんです。小野投手への四球が起点となって大量失点となりましたが、あそこをクリアしていけば波に乗れていたかもしれません。ちょっとしたきっかけのところまではきているんです。

 寺島は高卒ですが即戦力と言われ2年が経ちました。ドラフト1位ということや同期の活躍がプレッシャーになると思いますけど、遠いことじゃないんです。そこを僕たちがなんとかきっかけをつかめるようにさせたいですよね。2019年は、彼の方向性を見出せるシーズンになるんじゃないかと楽しみにしています」

 昨シーズン、寺島と同期の高卒投手20人中10人が一軍で勝利投手となった。同じドラフト1位の藤平尚真(楽天)や今井達也(西武)、ほかにも山本由伸(オリックス)、才木浩人(阪神)、アドゥワ誠(広島)、チームメイトの梅野雄吾らも頭角を現した。

 そのことについて寺島に聞くと、嫌な顔ひとつせず答えてくれた。

「同級生たちはそれぞれなにかあるから一軍で投げられるんで......。今の自分にはそれがないから投げられないと思っています。もちろん、同級生たちが頑張っていることで『自分も』という気持ちは少なからずあります。でも『自分はこんなもんじゃない』という気持ちはありません。これが今の自分なんだと思ってやっています」

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る