「落ちるところまで落ちた」ドラ1。寺島成輝が探す浮上のきっかけ (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 結局、この願いも実現しなかったが、二軍では7勝5敗、防御率3.40でシーズンを終えた。前半の不調と高卒2年目ということを考えれば、決して悲観する数字ではない。10月にはU23日本代表の一員として、コロンビアでのW杯も経験した。

「もっと投げたかったんですけど(登板は1試合)、実力の世界なんで。情けない気持ちもありますが、現実として受け止めました。そのなかで外国の打者と対戦できましたし、ちょっとした会話でも、なにかポイントになるかなということもありました」

 寺島は帰国すると、すぐにチームの秋季キャンプに参加した。

「ちょっとずつですが、いい感覚になってきています。真っすぐも、もっと『パチン!』という感覚をつかめば......。高校生の時に『真っすぐで押したい』と言ってきて、プロに入ってもそれを大事にしたいと思っていたのですが、その真っすぐがいかなくなって......とにかくもう一度、真っすぐを磨いていきたいです」

 そのために、新しい自分を創るのか、それとも過去の自分を探すのか。

「両方ですね。体も成長していますし、そうなれば体も使い方も絶対に変わります。今を考えながら、昔の自分を......やっぱり投げ方がよかったから、いいボールを投げられていたわけですから。自分が考えて取り組むことはたくさんあるはずですし、わからないことはコーチに聞いて、そうやって変わっていきたいですね」

 石井弘寿投手コーチに、寺島について話を聞いた。松山での秋季キャンプでは寺島の練習をじっくりと見守り、何度もアドバイスを送っていた。

「まず、投げる感覚がすばらしいです。投球術もあり、守備、けん制も申し分ない。ボールにスピンをかける感覚も優れています。140キロの数値でも、思ったよりきていると感じる真っすぐですし、曲がり球とか、抜き球、落ち球もすごく感覚よく投げられる。ただ、手先が器用すぎるので、リリースだけでまかなえてしまう。そのことで、下半身と上半身の連動性が疎かになっていました」

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