「ポスト浅村」西武・山野辺翔。補欠の高校時代からプロまでの成長過程 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「今年(2018年)の公式戦で9本だかホームランを打っているらしいじゃないですか」

 同じ東海地区のある社会人野球の監督が語ってくれた。

「なんであの選手を獲れなかったのかということですよ。その時点で、もうウチの負けなんです」

 聞くところによると、山野辺はテストを受けて、熱意を買われての入社だったという。

「たまにいるんですよ。あんな選手がウチにいてくれたらなぁ......って。山野辺にやられるたびに、そんなことを思っていました。大学ではそれほど目立った存在でもなかった。ウチだって獲れない選手じゃなかった。こういう選手を獲れなかった自分が悪いんだ......って、いつもベンチで反省していました」

 山野辺は社会人の2年間で18本のホームランを、しかも公式戦で放った。

 忘れられない場面がある。昨年7月の都市対抗野球でのことだ。所属する三菱自動車岡崎は東海予選で敗れて本戦出場を果たせなかったが、山野辺はトヨタ自動車の"補強選手"として出場していた。

 毎年、トヨタは主力選手をプロに送り出し、その"後釜"もしっかり育て上げる。そんなチームに補強選手で入ったとしても、せいぜい試合終盤の守備固めか代走、展開によっては代打ぐらいかな......と思っていたら、初戦もその次の試合も「7番・セカンド」でフル出場を果たした。

 トヨタと言えば、出場すれば優勝候補に挙げられる強豪チームだ。プレッシャーがかからないはずがない。それでも山野辺はいつもどおり、平然と自分のプレーをまっとうしてみせた。

 試合前のシートノックから"爆声"を張り上げ、縦横無尽に動き回る姿を見れば、これだけの活躍は予感できたはずだ。

「源田(壮亮)の二匹目のどじょうになってくれないかと思っているんですけどね......。いや、単なる願望じゃなく、浅村(栄斗)の穴を埋めてくれると評価して推薦したんですから」

 担当した安達俊也スカウトが、山野辺への期待の大きさを語る。

 前評判はそれほど高くなくても、使ってみたら「ええっ!」と驚くような働きを見せる。それが今の西武の伝統になりつつある。源田がそうだったし、秋山翔吾、山川穂高、外崎修汰......ベテランの栗山巧だってそうだ。そんな"DNA"を受け継ぐ新鋭が、また西武に加わることになる。

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