指名漏れの常連からドラ3でプロへ。
「精密機械」荒西祐大は即戦力だ

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 ツーシームのような"沈む系"のボールを1つ覚えたら、高校からプロに進める投手だろうと思いながら、こういう投手が潜んでいるからセンバツ後の"九州"は外せないと、あらためて思ったものだ。

 ある球団の九州地区担当のスカウトが、荒西についてこんな話を聞かせてくれた。

「毎年ドラフト候補に挙がりながら、結局8年かかったわけでしょ。よくドラフトの翌日の新聞に"指名漏れ"の選手の名前が出るじゃないですか。『あぁ荒西、今年も(ドラフト指名が)なかったかぁ......』と思うんですけど、反面『やっぱりなぁ......』っていうのもあったんです。獲れないことはないけど、『どうしても......』というわけでもない。好投手なんですよ。でも、決め手がなかったんです」

 そして昨年のドラフトで、26歳になった荒西はオリックスから3位指名を受けた。

 公式戦の場で、ホンダ熊本の荒西が頭角を現し始めたのは2~3年ぐらい前あたりだろうか。2016年の都市対抗の日本新薬戦で初先発すると8回途中2失点 の好投を見せ、その翌年の都市対抗でも日本製紙石巻を相手に10三振を奪って完封。続く東芝戦でも7回を3失点にまとめ、いよいよドラフト指名確実かと思われた。

「それだけに指名がなかった時は、落ち込んでたっていうのか、『社会人野球でレジェンドを目指す』みたいなことも言っていました」

 そう語ったのは、ホンダ熊本の荒西の後輩・知久将人(ちく・まさと)だ。

「それでも練習態度は変わらないし、今年は『絶対にジャパンに入るから!』って最初から言っていて、本当にジャパン入りしたんです」

 昨年の都市対抗で149キロを出して周りを驚かせた荒西は、ジャパンでも投手陣の核となる活躍を見せた。

「九州の社会人ナンバーワン投手は荒西」

 そんな高い評価がドラフト前に聞こえてきた。

「なんといっても、荒西さんはコントロールですよね」

 知久がうなった。

「僕も大学や社会人でいいピッチャーを何人も見てきましたが、あんなにえげつないコントロールを持った人、初めてですね」

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