DeNA宮崎敏郎の後継者となるか。伊藤裕季也の打撃は卓越している (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 感心するのは、3年秋に東都リーグの1部に昇格してからでも同じように好成績を挙げてきたことだ。3年秋から4年秋までの3シーズンの通算打率は3割5分7厘。本塁打も2部の3シーズンでは2本だったが、1部昇格以降は6本塁打。リーグのレベルが上がったにもかかわらず、持ち前の長打力をさらに伸ばし、バッティング技術も一段と向上させていた。大学4年間での伸びしろの大きさが、伊藤の"バットマン"としての非凡さを物語っている。

 東都リーグの1部に昇格してからの伊藤と言えば、「タイムリーを打てる打者」というイメージが強い。

 4番に定着してからは、文字どおり「4番の仕事をまっとうできる男」として、東都リーグのなかでは、亜細亜大の頓宮裕(とんぐう・ゆうま/オリックス2位指名)と双璧の強打者と見なしていた。

 僅差の二死走者なしの場面。ロング(長打)を狙っていい場面で、伊藤はきっちり仕事をしてきた。

 ドラフト後の明治神宮大会のことだ。九州共立大との試合で、0-0の7回裏。ひと振りに全神経を集中したような渾身のフルスイングから打球を左中間スタンドに持っていったバッティングは、まさに伊藤の真骨頂だった。

 マウンドにいたのは同じく昨年のドラフトで広島から2位指名を受けた島内颯太郎。この先のことを考えれば、ここでしっかりと"苦手意識"を伊藤に植えつけておきたかっただろう。しかし、その思いは一瞬にして吹き飛ばされた。

「伊藤は、春にも同じような場面で上茶谷(大河)からライトにライナーで放り込んでいますからね......」

 隣にいた記者が、そんなことを教えてくれた。

 上茶谷と言えば、昨年のドラフトでDeNAから1位指名を受けた東洋大の剛腕だ。そして昨年の春の上茶谷は、150キロを超すストレートだけでなく、高速スライダー、フォークも唸りを上げていた時期だ。そんな難敵相手に、しかもストレートを逆方向に打てるのは、抜群のヘッドスピードとミート技術があればこそ。

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