2019.01.02

栗山英樹は一刀流の大谷翔平に期待
「野球の神様はアイツに味方してる」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

── 足を上げない打ち方では対応しきれない次元があるということですか。

「そう。たとえば翔平に(アロディス・)チャップマンとの対戦の時のファウルについて(5月25日、ヤンキースタジアムでのヤンキース戦、8回ツーアウト1塁の場面で、ツーボール、ワンストライクからの4球目をレフトのポール際にファウル、5球目の101.9マイル/約164キロのストレートをショートゴロ)『惜しかったよね』って言ったら、『いやいや、申し訳ないですけど、日本であのタイミングで真っすぐを待ってて、(振り遅れて)あそこ(レフトのファウルゾーン)に行くピッチャーはいませんから』って......そういう感覚なんだよね。真っすぐ行きますよって投げてもらっているのに、あのファウルが精一杯だというんだから、やっぱりメジャーの野球、奥が深いよ」

── キャンプの時、結果を出せない自分と向き合った時、大谷選手は『メジャーは思ったよりも新しい技術を取り入れていた。でも日本で培ったもので勝負したいという気持ちがあったから、変えていいのかという葛藤があった』と振り返っていました。その言葉を監督はどんなふうに受け止めたのでしょう。

「嬉しかったよ。オレはそれを翔平に言い続けてきたつもりだったからね。メジャーはすごいけど、メジャーよりもすげえヤツがいるんだってことを翔平には示してほしいと......だから、翔平のやり方でメジャーリーガーを超えられるはずだし、超えてほしかった。

 実際、アイツ、この前の食事のときも話していたけど、翔平のなかに最初は"メジャー何するものぞ、オレが見せてやる"という気概は実際、あったと思う。ところが、それを変に意固地に押し通さないところがすごいんだよね。『すごいヤツはすごい。だったら今、オレがやらなきゃいけないことは何か。変えることは進化することなんだ』と気がつけたのは、翔平に素直な心があったからなんだよ。

 気概はいいんだけど、そこが強すぎて意固地になると、引っ張り過ぎる。もし気づくのがあと1カ月遅かったら、メジャー1年目は違うものになっていたはずで、あのタイミング(開幕してすぐ)で結果を出したからこそ周りもあんな感じになった。1カ月の遅れが人生を変えるんだよ。ホント、人生が変わっちゃう。あの1カ月がいかに彼の野球人生にとって大きかったか、ということ。あれがなかったら手術もできてないからね」