DeNA再入団の古村徹は真似→覚醒。数か月で150キロ左腕になった (3ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu
  • photo by Sankei Visual

 11月26日、8年ぶり2度目となるベイスターズへの入団会見に臨んだ古村は立派な大人になっていた。身体も、高校時代に細かった眉毛も、見違えるほどに太くなり「僕にはまだ伸びしろがある」という言葉も、以前とは違うように聞こえてくる。

「傍から見れば蛇行しまくりの野球人生ですけど、僕には目指すべきところがずっと見えていて、そこに向かってきただけです。NPBに戻れると決まった今だから言えることなのかもしれないですけど、やってきたことはすべて無駄ではなかった。胸を張ってそう言えます。正直、何度も心は折れましたが、野球が嫌いになることも、腐ることもありませんでした。

 僕を奮い立たせてくれたのは、両親や、現役復帰に背中を押してくれたベイスターズの先輩や同期や裏方の人たち。独立リーグでお世話になった指導者の方々や、切磋琢磨した仲間。そういう人たちへの感謝が、背負うものになっているんでしょうね。それがなきゃ、乗り越えられなかったですよ」

 古村は苦しい時、茅ヶ崎西浜高校3年時に放った、2011年夏の神奈川県大会3回戦での逆転満塁サヨナラホームランを思い出すという。

 ド派手な一発逆転という意味ではない。公式戦で1本もホームランを打ったことのない古村が何故あの場面で打てたのか。後日考えてみると、思いあたる節がいくつかあることに気がついた。

「野球の神様は絶対に見ています。正々堂々、自分の力を信じてやるべきことを続けること。そうすれば、必ず結果はついてくるんじゃないかと思うんです。再入団が決まって、みんなが『やっとスタートラインに立ったね』と喜んでくれていますが、僕のスタートラインは一軍の横浜スタジアムのマウンドに立った時。一軍が簡単な世界じゃないことは理解しているつもりです。でも、この4年間はブランクじゃない。僕にとってはかけがえのない経験となった"武器"です。

 そこで結果を残せなければ『やっぱり、ダメだったか』と言われてしまうでしょうね。無名の高校からプロを目指して精進している人、独立リーグでNPB復帰を目指して頑張っている人もたくさん見てきました。その人たちに『やれば道は拓けるんだ』と言えるようになるためにも、絶対に結果を残します」

 NPBに復帰するために生活費として切り崩してきた7年前の契約金は、この秋でちょうど底を尽いた。偶然と言ってしまえばそれまでだが、まるで一軍のマウンドに上がるための"支度金"だったようにも思えてしまう。

 古村にとっての最終目標は、一軍のマウンドで1年間投げ抜くこと。その先に、史上初となる打撃投手からのカムバック賞も見据えている。2019年シーズン、古村はプロ野球選手として多くの人に希望を与えられる存在になってくれる。絶対になれるのだ。「こむらがえり」が野球界で新しい意味を持つようなことだって。筆者は信じている。

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