DeNA再入団の古村徹は真似→覚醒。数か月で150キロ左腕になった (2ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu
  • photo by Sankei Visual

 古村が理想の形を掴んだのは4月下旬。今年チームに加入した乾真大(元巨人)のキャッチボールを真似してみたところ、スピードガンは145キロを計測した。その後も、5月4日の試合で146キロ、同20日の試合で149キロとスピードが上がっていく。自分の中にあると信じてきた"伸びしろ"が、実力に変わっていくことを実感する日々だった。

「これまで、あらゆる体の使い方、フォームを試してきました。その過程で積み重ねてきた失敗があったからこそ、やっと自分にハマる形を見つけられたんだと思います。どうしていいボールが投げられるのかを頭で理解できるようになったので、7月にもフォームが崩れたんですけど、修正して戻すことができました。

 伊藤監督は『やったのは古村自身だ』と仰いますが、僕にとっては神様みたいな人ですよ。でも、以前の自分が伊藤さんや乾さんと会っていても、今のようになれていたかわからない。僕にとって必要な失敗を積み重ねた上で、最高のタイミングで、最高の人たちに出会えたことの集大成だと思っています」

 今夏には、古村のストレートは目標としていた150キロに達した。フォームの悩みがなくなり、カットボール、フォークを習得したことで"狙って三振が獲れる投手"になった。

 チームではセットアッパーを任され、獅子奮迅の活躍を見せていた古村のもとに、NPB複数球団のスカウトが注目しているという話が入ってきた。リーグを終えた秋、古巣のベイスターズを含めた各球団の入団テストを「自分の力を出し切りました」と振り返った古村は、10月19日にNPB挑戦のリミットとしていた25歳になった。

 ドラフトが終わり、各球団が来季の編成を決めていく。そんな中、古村から「(DeNAに)決まりました」という連絡がくる。信じられない思いだった。

 茅ヶ崎西浜高校時代の恩師・渡辺晃監督も、古村から再入団の報告を受けた際には感動に打ち震えたという。

「体もふた回りほど大きくなったが、人間として本当に大きく成長してくれましたね。メールの文面にも人を気遣える言葉遣いが表れていた。高校を卒業してから、いい人たちに巡り会えたんだろうなと思います。指導者をやってきたなかで古村にはあらためて『人間は成長するものだ』と、教えてもらったように思います」

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