意外すぎる「こむらがえり」。古村徹は戦力外→NPB復帰を信じ続けた (4ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu

 2016年、愛媛マンダリンパイレーツに入団を決めるまでも、多くの関係者の後押しがあった。1年目は中継ぎとして26試合に登板して防御率0.80の好結果を残し、チームは四国アイランドリーグを制する。BCリーグの優勝チームと「独立リーグ日本一」の座を争うグランドチャンピオンシップに進み、そこで再会したのが、2014年に群馬ダイヤモンドペガサスに入団した伊藤だった。

 共に2勝ずつで迎えた最終戦は群馬が勝利し、初のグラウンドチャンピオンシップ王者に輝いた。その年に8勝を挙げていた伊藤は、第4戦の勝利投手となりMVPを獲得。古村は激戦を終えた後、伊藤と、シーズン途中に愛媛マンダリンパイレーツに加わった北方との3人で、同年に引退するベイスターズの三浦大輔のTシャツを着て記念写真を撮った。

「1年間、投手としてやり抜いて初めて優勝を経験できました。めちゃくちゃうれしかったですし、その後のグラチャンで負けて悔しさも味わえた。まだまだ『やれる』という手応えもありますし、現状に満足せずに精進するだけです」

 独立リーグでの1年目をそう振り返った古村からは、肩の痛みを気にせずに投げられる喜びが感じられた。シーズンが終わった直後からは、四国アイランドリーグと人材交流を行なっていた台湾の社会人チーム・崇越(トプコ)ファルコンズに派遣され、これまでの投げられなかった鬱憤を晴らすように投げ続けた。

 翌2017年の1月には、地元・茅ヶ崎市の主催で行なわれた同市出身である倉本寿彦のトークショーに、古村がサプライズゲストとして登場した。

「僕は絶対にNPBに戻ります。グラウンドで対戦しましょう」

 打撃練習に付き合ってくれたかつての相棒である古村の呼びかけに、倉本は「待ってるよ」と返し、熱い握手を交わす。

 同郷の先輩後輩の誓いに、その場にいた誰もがそうなってほしいと願いつつ、現実はそう簡単にはいかないだろうと予想していた。現実として、その年、古村は最も苦しいシーズンを迎える。

(後編に続く)

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る