谷繁元信は炭谷銀仁朗の移籍に懐疑的。
「決断が2、3年遅かった」

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • photo by Kyodo News

―― 一方で、オリックスからDeNAに移籍した伊藤光、日本ハムから中日に移籍した大野奨太といった、パ・リーグでの実績がある捕手も現チームで苦しんでいます。リーグをまたいでの移籍は難しいということでしょうか。

「それは関係ないと思います。彼らは移籍する前に力が落ちていました。伊藤は金子千尋(オリックス→日本ハム)、大野はダルビッシュ有(現シカゴ・カブス)や大谷翔平(現エンゼルス)などをリードして活躍しましたが、近年は出場機会が少なくなっていましたからね。中日、DeNAとも絶対的な捕手がいない中で、首脳陣の信頼を勝ち取れなかったのは力不足。今季のふたりの成績に関しては『こんなものだろう』という印象です」

――移籍して成功した捕手ですと、谷繁さんはもちろん、阪神の新監督に就任した矢野燿大さん(中日→阪神)が思い浮かびますが。

「矢野さんは、中村武志さんに次ぐ中日の二番手捕手として活躍されていました。外野も守れる選手だったので手放したくない存在だったと思いますが、当時の監督だった星野(仙一)さんが、『阪神に入ったら正捕手になれる可能性がある』と考えてトレードに出し、その"親心"に応える形で長く活躍された。前チームで確固たる地位を築いた後の移籍ではありませんでしたから、私とは少し状況が違いますかね」

――確かに、谷繁さんはベイスターズの正捕手として日本一に貢献し、FAで中日に移籍を決めた2001年のシーズンも137試合に出場していました。球界を代表する捕手として新しいチームに移ることでのプレッシャーはありましたか?

「今思えばなんですが、プレッシャーはすごく感じていました。ベイスターズで地位を築いてリーグ優勝と日本一も経験したので、偉そうな言い方になってしまいますが、『中日を勝たせないといけない』と思っていましたし、自分が来てチームが弱くなったとは言われたくなかったですから。

 実際に移籍してから苦労したのは、投手陣への対応です。対戦する機会もあったのでどんなボールを投げるのかはある程度わかっていたんですけど、クイック、状況判断、ブルペンでの調整方法など、外から見るのと中から見る感覚の違いに戸惑いました。予想外なことだらけで、課題が山積みでしたね」

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