2018.12.05

【イップスの深層】二軍で1試合登板のみ。
森大輔のプロ野球は終わった

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Nikkan sports

「半年でやめてしまって、僕を雇うことでかかるコストもあったはずなのに……。温かく送り出してくださって、本当にありがたかったですね」

 森が新天地に選んだのは、独立リーグだった。2008年7月、BCリーグ・石川ミリオンスターズに練習生として入団する。最初の1年間は練習生だったため無給だった。

 翌2009年のシーズン途中から選手として正式契約。月給12~15万円という独立リーガーとしてプレーする。2009年は11試合に登板し、5勝3敗、防御率1.88、2010年は26試合で5勝7敗、防御率3.07。相変わらず四球は多く、好不調の波は激しかったが、主に先発投手として活躍できた。

 ストレートは140キロ台中盤に達することもあった。しかし、森は投げながら「これではNPBに通用しないな」と痛感していたという。

「最初の1~2回は140キロ台が出るんですけど、3回以降になると120キロ台後半~130キロ台前半までスピードが落ちてしまうんです。イップスになってから、下半身を使わずに腕だけで投げるようになっていたので、すぐに疲れてしまうんです」

 結局、2011年シーズン途中で石川からも戦力外通告を受ける。「やめ時だな……」と感じていた森は、球団から紹介された企業に就職することにした。年齢はすでに、29歳になろうとしていた。

「結婚して子どももいて、早く自分の力で生計を立てられる人間になりたかったんです」

 就職したのは、白寿生科学研究所という医療機器メーカーだった。血流を改善する機器「ヘルストロン」を販売している会社だ。森は島根・橋北店で4年働き、現在は地元・七尾店に配属され、店長を任されて3年になる。

 上司である大野眞一所長(金沢営業所)に森の働きぶりについて聞くと、じつに誇らしげにこう語ってくれた。

「森くんはとても優秀で、よくやってくれています。お客様との距離が近い店長だと感じます。また、会議でも常にポジティブな発言をしてくれるので、我々も前向きに仕事ができます。すごくありがたい存在ですね」