スポ根漫画みたいなヤクルト秋季キャンプ。しごきの中にも遊び心あり (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 山下令●写真 photo by Yamashita Ryo

 廣岡大志は「僕はショートを守るので、しっかり指示を出さないといけないですから」と、ゲームノックでは積極的に声を出していた。

「考える力はついたと思います。それを意識する練習が多いですし、自分が間違っていたとしても、まずはアクションを起こすことを心がけました。野球にはいろいろな考え方がありますし、間違っていたとしても教えてもらえばいいことなので......」

 ゲームノックでは山崎のベースランニングも印象的だった。

「ベースターンを意識した結果が出せました。ずっと『早く、小さく』と言われていて、その意識がスライディングにもつながりました。自分としてはもっとできると思っています。今年、一軍で戦力になれなかった悔しさを考えれば、『しんどい』とか言っていられません。オフも休んでいる暇はないですし、野球から離れる時間はないと思っています」

 朝のミーティングでの"3分間スピーチ"もこのキャンプの見どころのひとつである。選手がテーマを探し、それについて構成して発表するのである。

 ルーキーの村上宗隆は"UFOと電子レンジ"、同じくルーキーの蔵本治孝は"メダルゲームをたまにはやってみてはどうですか"を発表。出色だったのは、松本直樹のスピーチだった。アメリカの公民権運動の話を、メジャー初の黒人選手であるジャッキー・ロビンソンと背番号にまで広げて、「今日も頑張りましょう」と締めくくった。この名スピーチに「頭いいな」「コーミンケンウンドー」という言葉が飛び交ったのだった。

 3分間スピーチの発案は宮本慎也ヘッドコーチだ。

「このスピーチはみんな嫌だったでしょうね。僕が選手だったら嫌だと思いますから。野球にどう直結するかといえば、自分でテーマを探して、構成を考えて、まとめる。それは試合前の準備にもつながるでしょうし、8人制の紅白戦もそうですけど、考えることが身につく。世間でいいと言われるものは何にでも通じるでしょうし、決して悪いことではないと思います」

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