トライアウトで実現した運命の対戦。鵜久森淳志「まさかここでも...」 (2ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 済美(愛媛)が創部以来初となる甲子園出場を果たした2004年春のセンバツ。済美にとっても、鵜久森にとっても"甲子園初陣"となった1回戦、対戦相手である土浦湖北(茨城)のマウンドに立っていたのが、エースナンバーを背負った須田だった。

 試合は9-0で済美が勝利。鵜久森は、4回に須田から2ランも放った。この試合で波に乗った済美は甲子園初出場初優勝を達成。センバツで本塁打を放った鵜久森は「高校球界屈指の長距離砲」として熱視線を浴びるようになった。

 高校3年時の活躍を評価され、高卒でのプロ入りを果たした鵜久森と、早稲田大、JFE東日本でのプレーを経て、2010年にドラフト1位選手としてDeNA入団した須田。同じ"プロ野球選手"の立場になった後も、2人の運命は交錯する。

 2015年に北海道日本ハムから戦力外通告を受けた鵜久森は、自身初のトライアウトを受験し、ヤクルトからオファーを得た。須田と同じセ・リーグに移籍すると、一軍の舞台での再戦が実現する。

 2017年4月2日、神宮球場でのヤクルト×DeNA戦の延長10回裏、打席には一死満塁で代打起用された鵜久森、マウンドには6人目の投手として登板した須田が立つ。結末は劇的だった。鵜久森がレフトスタンドへシーズン第1号のサヨナラ満塁本塁打。代打でのサヨナラ満塁弾は、プロ野球史を見渡しても、16人しか達成していない快挙だった。

 今季のイースタン最終戦でも対戦の可能性があったが、打順の巡り合わせもあり、"ニアミス"に終わった。試合後、お互い「対戦できなくて残念だった」と連絡を取り合ったが、ともに受験を決意した今回のトライアウトでも"運命のいたずら"が用意されていた。

 トライアウトの対戦予定に目を通すと、須田の対戦予定者のなかに自分の名前があった。

「まさかここでも......と思いました。自分にとって甲子園で初めて対戦した投手で、当時の光景も鮮明に思い出されましたし、特別な思いがありました。自分は高卒で、須田は大学、社会人を経てのプロ入り。形はそれぞれ違いましたけど、年数を重ねて、こういった場所でまた対戦できるのは、嬉しかったですね」

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