ボールの軌道が不気味な高橋礼。メジャーのスカウトをうならせた

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Getty Images

 昨年のドラフトでソフトバンクは1位で鶴岡東高校の吉住晴斗を指名した。この時点で2位は間違いなさそうな社会人投手あたりを狙ってくるのだろうと思っていたら、「上位」という前評判などほとんどなかった"異色のアンダーハンド"を敢然と指名してきたから驚いた。

 正直、2位でなくても獲れるだろう......と。たしかに、手足の長いアンダーハンド投手はそれだけで貴重だ。打ちにくさなら、間違いなくアマチュア屈指の好投手だ。

日米野球の第1戦で好投した代表初選出の高橋礼日米野球の第1戦で好投した代表初選出の高橋礼 専修大学1年の時、東都大学のリーグ戦に現れた高橋の姿は、ある意味、鮮烈な衝撃を伴っていた。

「こんな美しいフォームで投げる長身のアンダーハンドって、今まで見たことあったかな......」

 ただでさえ、アンダーハンドの投手が減ってきている野球界である。その上、これだけ長い手足をしなやかに潜らせてから浮上できるアンダーハンドなんて......。長いプロ野球の歴史を遡ってもそういるわけではない。

 高橋は地面から這い上がってくるようなストレートとカーブ、シンカーを駆使して1年生の秋からリーグ戦に登板。2年秋までに8勝をマークした。その後、フォームを崩して4年春まで混迷の日々を過ごしたが、最後の秋のリーグ戦で見事復活。5勝を挙げて、ソフトバンクからドラフト2位指名でプロに進んだ。

「あれだけの大型のアンダーハンド投手なのに、コントロールがよくてびっくりしたんです」

 そう語るのは、専修大で高橋とバッテリーを組んでいた2年先輩の時本亮(現・東芝)だ。

「とにかくストレートがすばらしかった。高めはホップしてくるように見えるし、右バッターのひざ元にも投げられるコントロールがあったので、配球も"高低"で攻めていました。スライダーも左バッターの高めに使ったりして。変化球で両サイドに揺さぶる必要なんてなかったですね」

 野球にいたっては真剣。いつもフラットに、淡々と投げる姿が頼もしかったという。

「礼は身長があるので細く見えますけど、ウエイトも熱心にやっていましたし、下半身なんてすごくボリュームがある。あの下半身を見れば、コントロールのよさも理解できます」

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