上林誠知はイチローからの影響大。「記憶より記録でアッと言わせたい」

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Getty Images

 日本シリーズの激闘が終わってから3日後の11月6日、侍ジャパンのトップチームが福岡に集結した。全体練習を行ない、翌日はチャイニーズ・タイペイとの壮行試合に臨んだ。それから9日に開幕した「日米野球」6試合をMLBオールスターと戦う。

今季フル試合出場を果たした上林誠知。日米野球でも侍ジャパンの一員として戦っている今季フル試合出場を果たした上林誠知。日米野球でも侍ジャパンの一員として戦っている 最後の頂上決戦まで戦ったソフトバンクと広島の選手たちはクタクタになっているに違いない。間近で全戦を取材したが、満身創痍という言葉が決して大袈裟ではなかった。今回の侍ジャパンの29選手のうち、ソフトバンクと広島の両チームだけで計10名(それぞれ5名ずつ)を占めている。そのなかでもシーズン143試合にフル出場しているのは、ソフトバンクの上林誠知と広島の田中広輔のふたりだけだ。

 ただ、ポストシーズンの試合数まで加味すれば、上林の疲労度の方が圧倒的に上回るのではなかろうか。ソフトバンクはシーズン2位だったためにクライマックスシリーズ(CS)はファーストステージから戦ってきた。CSファイナルもセ・リーグは広島の3連勝であっけなく決着したが、ソフトバンクは今季においては「格上」の西武を相手に必死で食らいつき、そして勝ち上がった。

 ソフトバンクは157試合の真剣勝負をくぐり抜けてきたのだ。

 上林は昨年レギュラーに定着したばかりの23歳外野手である。実質的にいえば「2年目のジンクス」と戦わなければならなかった今シーズンにおいて、あらゆる面で前年以上の成績を残してみせた。先述した出場試合数をはじめ、打率は前年2割6分→2割7分へ。本塁打は1322と大きく成長した。そして打点5162、盗塁1213と伸ばした。

 とくに飛躍を感じさせたのがオールスター後の成績だ。昨季はシーズンをフルに戦う経験値のなさがモロに出て、打率.219、4本塁打と大失速した。しかし、今季は打率.26610本塁打をマークした。

「今年は寮生活じゃなかったから(笑)」

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