キーマンは甲斐拓也。「アバウトに構える」リードで勝利をもたらすか (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Kyodo News

 ミランダの持ち味は140キロ台中盤のストレートとチェンジアップ、フォークというタテの変化球を中心とした組立てだ。初見の相手はそれに面食らうようで気持ちがいいほど手玉に取ったのだが、対戦を重ねればもちろん研究もされる。

 そうなるとミランダは慎重になりベース板を広く使ったピッチングをしようとするのだが、結果的にカウントを不利にして苦しくなるという悪循環に陥ったのだった。

 広島とはもちろん初顔合わせになる。楽しみな部分は大きいが、過度な期待は禁物だミランダの出来次第という見方もできるが、よさを引き出せるか否かが勝敗の分かれ目になるのではなかろうか。

 つまり、女房役の甲斐拓也が真のキーマンとなる。

 日本シリーズとなると必ずと言っていいほど捕手がクローズアップされるが、まさに腕の見せどころだ。今季133試合にマスクを被り、今では侍ジャパンの常連にもなりつつある25歳捕手が、本当の成長を見せられるだろうか。

 捕手のリードは配球だけが重要ではない。ポイントは、ミットの構え方だ。甲斐はベースの四隅ピタピタにミットを構える傾向が強かった。そこにボールが来れば、おそらく打者が快打を飛ばすのはかなり難しいだろう。

 しかし、投手陣からクレームが出た。

「勘弁してくれよ。『パワプロ』じゃないんだからさ」

 ゲームならともかく、生身の人間だから誰しもミスをする。体の疲労とともに神経まですり減らしながら投げ続けるのは不可能だ。

「甲斐の構えは、今季の途中から変わってきたと思いますよ」

 吉鶴憲治バッテリーコーチはそのように評価している。

「僕も言いました。『お前のリード通り投げてくれれば、みんな25勝しちゃうよ』って。オールスターが1つの転機になったと思いますよ。『一流の投手が揃っているんだから、思い切って真ん中に構えてみぃ。オレはテレビでちゃんと見ているからな』って」

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