広島のレジェンド・北別府が伝授「日本一へ、ホークス打線の攻略法」 (3ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

「リーチの長いブーマーに対して、徹底して内角を攻めました。長いシーズンなら、ブーマーほどの好打者だったら同じパターンの攻めをすれば対応してくるでしょうけど、短期決戦では時間的に余裕もなく、やがてバッティングが崩れてきます。

 とくに短期決戦ではこうした偏った攻め方もありだと思います。レギュラーシーズンではそういうことはなかなかできないけど、日本シリーズだからこそできる攻め方ってあるんです。徹底した攻め方をすれば、(バッターの意識のなかの)ストライクゾーンが広がってくる。だから少々のボール球でも振ってくれる」

 たしかに、1984年の日本シリーズでブーマーは調子を落とし、結果、ホームベースのはるか前方でワンバウンドしたボール球に手を出し、三振を喫している。ブーマーに仕事をさせなかったことが、カープ日本一の大きな要因になったことは言うまでもない。

 そうした経験を踏まえ、このシリーズで抑えるべきホークスの打者は柳田悠岐だ。北別府氏は柳田攻略について、次のように語る。

「彼もブーマーと一緒でリーチが長いでしょ。だから内角が弱点だと思うんです。彼をしっかり抑えると、打線を分断できるし、得点力はグッと落ちるはず。もちろん、一発は怖いんですが、アウトコースだけで抑えるのは難しい。インサイドは絶対に使わなくてはいけない。

 ある意味、徹底したインサイド攻めは、シリーズだからこそ必要なんです。とにかく、パ・リーグのピッチャーと同じような力勝負は通用しません。緩急を使って、丁寧に投げるピッチングを忘れないでほしいですね。投手陣のキーマンは、もちろん大瀬良大地です。おそらく初戦を任されるでしょうから、カープにしてみれば何がなんでも勝たないといけません」

 力勝負では、CSファイナルステージであの強力打線を擁した西武を蹴散らしたソフトバンクを倒すのは並大抵のことではない。

「とにかく広島らしい野球を、セ・リーグらしい野球を......」

 この言葉に、広島一筋だった北別府氏の"プライド"と"カープ愛"がにじみ出ていた。34年ぶりの日本一をかけた戦いがまもなく始まろうとしている。

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