最下位・阪神に見た唯一の光。大山悠輔は「真の4番」となりえるか (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

 とくに9月に入ってからホームランが急増(9本塁打)したが、いいフォームで打てていたなによりの証拠だ。凡打になってもしっかり自分のスイングができているから、いい打球がいく。

 あえて点数をつけるとするなら、85~90点はあげられる内容だった。残りは外角の変化球にまだ脆さを感じさせること。ここを解消できれば100点満点。さらなる飛躍は間違いないだろう。

 打者が伸びる時というのは、何らかの理由がある。たとえば、ある打席での感覚だったり、苦手にしていた球種やコースをとらえた時だったり、ちょっとしたことがきっかけになることがよくある。ただ聞く限り、今シーズンの大山にはそうした"あの1球"や"あの打席"というのはないようで、つまりは徐々にいいスイングを維持できるようになったということだろう。

 ただ大山にとって不幸だったのは、打撃コーチの片岡篤史、平野恵一がともに左打者だったことだ。バッターボックスに立った時、まず右打者と左打者では見える景色が違う。ということは、投手の腕の振りも違って見えるわけだ。だからボールの待ち方も違ってくるし、バットを押し込むタイミングなど、多くのことが変わってくる。極端な話、右打者と左打者では練習方法も違ってくる。

 だから、チーフ打撃コーチが左打者の場合、補佐役として右打者のコーチを置くチームは多い。しかし、今年の阪神の打撃コーチはふたりとも左打者で、おまけに金本監督も左打者。これでは右打者の指導に弊害が出るのは明らか。私のみならず、多くのメディア、評論家が指摘してきたことだ。金本監督が辞任し、矢野燿大が新監督となったが、ぜひ打撃コーチは左打者だけでなく、右打者を入れてほしいものだ。

 少し話が逸れてしまったが、いずれにしても大山が今シーズン、急成長を遂げたことは間違いない。ただ、まだ実績の乏しい2年目の若手に4番を任せたのはどうか......。それだけ期待している選手というのはわかるし、チーム事情も理解できる。もし「調子がいいから」という、いわば成り行きで据えたのだとしたら考えものだ。

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