ファイターズがCS敗退するも、栗山英樹は人知れず未来へ種を蒔いた (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 結果、ノーアウト満塁から、上沢は柳田悠岐にタイムリー、アルフレド・デスパイネに満塁弾を浴び、一挙、5点を奪われた。ファイターズにとっては、最初の流れをホークスに持っていかれたという点で、初戦というだけでなく、この超短期決戦を通して、取り返すのが容易ではない大量失点だった。

 第2戦を取ってタイに持ち込んだファイターズではあったが、第3戦で力尽きた。経験させることで前に進めたい選手と、経験があって勝ち切るために必要な選手をうまく使いながら、ときに動き、ときに動くのを我慢して、チームをファイナルステージへ導こうとした栗山監督だったが、栗山流に言わせてもらえば、最後の最後、今のファイターズでは何かがまだ足りていない、と野球の神様に言われてしまったのかもしれない。

 その象徴的な存在が、試合終了をネクストバッターズサークルで見届けた清宮幸太郎だった。第1戦で代打に立って、セカンドゴロに倒れた清宮は、このファーストステージを振り返ってこう言った。

「最後はもちろん、回ってこいと思っていました。自分の力不足ですし、来年は自信をつけて、信頼を得て、もっと結果を残して、この舞台に帰ってきたいなと......次のシーズンは、もっと進化した自分で帰って来られればいいなと思います」

 その清宮について、栗山監督がこんな話をしていたことがある。

「プロ野球で活躍するためには、我慢というものが必要になることもある。幸太郎は今までそういうことをしてこなかったと思うので、今年はケガでバットが振れないスタートになって、ああ、これが野球の神様が与えた進み方なんだなぁと思ってたよ。そりゃ、順調にいく方がいいに決まっているんだけど、今年、いろんなことを感じたはずの幸太郎は、もう我慢の時期は終わってる。幸太郎だけじゃない。横尾にしてもナベにしても、上沢も優心もチョクも(大田)泰示も、経験させたことを越えて、もっともっと前へ進んでもらわないと、と思ってこっちはやってるんでね」

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