森友哉は「球界の絶滅危惧種」。「打てる捕手」として進化を遂げた

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 打率.275(リーグ15位)、16本塁打(同18位)、80打点(同9位)――。

 今季の数字だけを見ても好打者ぶりが伝わってくるが、捕手というポジションを考慮すると、その成績が一層光って見える(今季の成績は10月8日時点)。

正捕手としての地位を着実に固めつつある森友哉正捕手としての地位を着実に固めつつある森友哉 高卒5年目の2018年シーズン、西武の森友哉は捕手として74試合、指名打者で49試合に先発出場し、10年ぶりの優勝の立役者になった。

 球界の"絶滅危惧種"となりつつある「打てる捕手」の価値は、パ・リーグのキャッチャー陣と打撃成績を比べるとよくわかる。そもそも規定打席に達する捕手は田村龍弘(ロッテ)のみで、打率.241。本塁打と打点はリーグのトップ30位に入る者さえいない(※日本ハムの近藤健介は捕手登録だが、今季1度も捕手として出場していないので除外)。森は指名打者としての出場も3~4試合に1度ほどあるが、逆に打力の高さを示している。

「本当に『いいキャッチャーだな』って言われるようになるには、どんなにいい選手でも3年〜5年はかかります」

 森を二軍時代から指導してきた秋元宏作バッテリーコーチは、ルーキーイヤーの夏にそう話していた。当時はピッチングマシーンの球を捕るという地味な練習を繰り返し、キャッチング技術を磨いた。キャッチャーにとって捕ることは原点で、そこから送球、リードにつながっていくからだ。

 あれから4年が経った今季、森は74試合と西武でもっとも多く先発マスクをかぶった。球界トップクラスの守備力を誇る炭谷銀仁朗が41試合、大阪桐蔭の先輩でもある岡田雅利が28試合と両者を押しのけた格好だ。森は一軍で実戦経験を重ねることで、捕手として実力に磨きをかけたと秋元コーチは語る。

「練習でやってきたことをゲームでできるようになり、全体的にレベルアップしていると思います。リード面に関してはまだおっかなびっくりなところはあるけれども、そのなかであいつ自身が感じられることが増えてきているので。去年まではシーズン終盤の順位が決まったときに守っていたけど、今年は開幕からチームが首位にいるなかでマスクをかぶって、メンタルの成長も大きかったと思います」

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