高橋由伸が辞任。名コーチが語る長期政権の難しさと監督の消費期限 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 だから監督は1年目から勝負に出なくてはならない。かつて西武で指揮をとった伊東勤監督や渡辺久信監督などは、1年目でいきなり優勝してみせた。当然のことながら、選手の力によるところは大きいが、監督の起用がズバズバ当たり勝つようになってくると、「この監督だったら勝てるぞ」と選手たちは乗ってくる。その結果、優勝すれば、監督の求心力は最低でも2年は維持できる。

 とはいえ、連覇するのは簡単なことではない。だから、広島の緒方孝市監督がどの程度、チームを統率できているのかわからないが、少なくとも「勝てているから維持できている」のは間違いない。

 かつてヤクルト監督時代のノムさんも、最初に就任した1990年は5位だったが、翌年は3位になり、3年目に優勝し、翌年連覇を達成した。おそらくこの時が求心力もピークだったはずだ。

 その後、4位と優勝を繰り返したが、この頃になると評価は定まっているし、チームとしてもマンネリ化状態になる。同じ監督ならやることも変わらないし、ミーティングで言うことも決まってくる。

 それがいかに大事なことでも、選手に響かなくなる。これは先程も言ったが、ノムさん個人というより、組織の限界ということなのだろう。そうしたチームを変えるには、やはり監督を変えるしかない。

 ノムさんは4位となった98年を最後に、ヤクルトを退団。その後、阪神の監督となったわけだが、結局ヤクルトでは9年間指揮をとった。いま思えば、よくこれだけ続いたと思う。

 同じチームで長く指揮をとるというのは、本当に難しいことだが、求心力を失わないための必須条件とは何か。

 私が思うに、「ぶれないこと」が第一だと思う。戦い方、方針もそうだし、選手と接しているなかでの言動もそうだ。言葉にすると簡単だが、これを貫くのは容易なことではない。だが監督がぶれなければ、チームの結束は保てる。

 言い換えれば、負けていくチームというのは、根底に監督の「ぶれ」がある。チームがどんな状況に置かれても、自分の野球を貫き、いつも通り選手に接することができるか。「ぶれない」ことが、監督になる人にとってもっとも重要な資質なのだと思う。

(つづく)

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