高橋由伸が辞任。名コーチが語る
長期政権の難しさと監督の消費期限

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 プロ野球といえども、監督は絶対的な存在だ。なにより選手起用において、すべての権限を持っている。正直な話、人柄などは二の次だ。どんなに評判が悪くても、チームを勝たせられる監督なら選手は嫌々でもついてくる。逆にどれだけ人格者でも、チームが低迷し、浮上させられなかったら選手の気持ちは離れていく。

 で、その消費期限だが、私が思うに"3年"というのがひとつの目安になると思う。1年目は選手も「この人はどんな人なのか?」と、性格のみならず監督の目指す野球を見定める。それは監督も同じで、選手がどんな性格なのか、どんなタイプなのか把握するにはそれ相応の時間がかかる。それで1年が過ぎてしまうこともある。内部昇格の監督ならこうした時間は省けるが、外部から招いた場合、どうしてもお互いを知るのに時間を要してしまう。

 そしてなにより結果だ。1年目のシーズン、そこそこの結果で終わればよし。しかしBクラスに終わった場合、2年目のハードルは一気に高くなる。その2年目も満足な結果で終わらなければ、3年目は正念場となる。

 たとえば2年続けてBクラスとなると、3年目の春の時点で選手たちは「この監督で勝てるのか......」と値踏みし始めるわけだ。そうなると監督の立場は微妙だ。これは試合前のベンチからして空気がわかるものだ。「なめている」といったら乱暴な言い方だが、実際の話、勝てないチームになればなるほど、選手は監督をなめるようになる。空中分解の第一歩である。

 それはコーチも同じで、本来なら一蓮托生のはずだが、負けが込んでくると監督とコーチとの間に距離ができてくる。ひどい時は、「今の監督は来年がないから、今のうちに次の就職先(チーム)を探さなきゃ」と、平然と言うコーチもいる。

 余談だが、今年の春頃、巨人の取材でグラウンドを訪れた時、「あるコーチが前任の原(辰徳)監督と高橋(由伸)監督を比較して、よからぬことをもらしている」といった噂を耳にした。これでは高橋監督もやりにくいはずだし、求心力が落ちているなによりの証拠である。

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