パ・リーグMVPは山川穂高か浅村栄斗か。意義ある1票を投じてほしい (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

「タイミングをゆっくりとるという意識です。ピッチャーがリリースした瞬間に、自分が打てる体勢を作る状態まで近づければ、ボールも自然に呼び込んで打てる」

 自分の間で構え、フルスイングと単打狙いを使い分ける。リーグ2位の得点圏打率.369という勝負強さの裏には、技術とメンタル、そして4番・山川への思いもある。

「アグー(山川の愛称)は後輩なので、プレッシャーのかかるところではなるべく打たさないように。自分にはプレッシャーがかかっていいから、とにかく楽な状況で回せるようにと思っていました。たとえば、状況を見て自分が右打ちをして、アグーに余裕のある打席を1打席でも多く回してあげたい」

 浅村の評価ポイントは守備にもある。失策数12はリーグで4番目に多いが、捕殺数は同2位の408、併殺数は同トップの98とアウト数を積み重ねた。セカンドの選手は高い守備力を求められるなか、MVP級の打力を誇る浅村を配置できるメリットはチームにとって計り知れない。

 記者投票で決められる年間MVPには明確な評価基準がないなか、ともに傑出した成績の浅村と山川をどう比べればいいか。

 たとえば、セイバーメトリクスの数値にOPS=「On-base(出塁)Plus slugging(長打)」がある。山川はリーグ2位の.983で、浅村は同5位の.897。.900以上の山川は「A=すばらしい」、わずかに下回る浅村は「B=非常によい」となる。

 OPSが有用なデータと考えられるのは、得点との相関性が高いからだ。出塁は得点の起点になり、長打は得点を近づける。しかし、そもそも計算式の異なる出塁と長打を足すのはどうかと疑問を呈す声もある。OPSは完璧な数値ではない。

 また、3番・浅村、4番・山川という並びをどう考慮すればいいか。アメリカでは「ラインナップ・プロテクションは存在するのか」という議論がある。簡単に言えば、前後の打者による影響はあるのかというものだ。たとえば、投手は目の前の好打者に神経を使い、次の打者に失投することがあるかもしれない。

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