リーグ3連覇のカープに會澤翼あり。チームに一体感をもたらした男気 (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 磨きがかかった打撃で相手にプレッシャーをかける代償として、広島捕手初の2ケタ死球も受けてきた。それでも會澤は逃げなかった。「なめられちゃいけない」と、死球の次打席でも踏み込んでいく。死球後の打席の打率は5割(打席なし3、四球2、死球1、8打数4安打1本塁打2打点)。勝ち気な性格を証明してみせた。

 5月1日の巨人戦では山口俊から、2打席連続死球に思わず激高した。近年では珍しく両軍がグラウンドに入り乱れるシーンが見られた。珍しく感情を露わにしたのには、伏線があった。

 會澤がまだ一軍定着を狙う立場にいた2012年8月2日。当時DeNAの山口俊から左目下部付近に死球を受け、救急車がグラウンド内に乗り込む異例の事態となった。鼻骨骨折と診断され、その後一軍復帰を果たせぬままシーズンを終えた。

 手術を受けた際に、鼓膜まで響いた鼻骨を正す、あの「ボキッボキッ」という音は今でも「耳に残る」という。

 男3兄弟の末っ子で、両親からはかわいがられ、自由に育てられた。ただ「男としてプライドを持ちなさい」とだけ言われてきた。教育係は年が離れた2人の兄。徹底的に礼儀作法をたたき込まれた。両親の教えと、厳しい2人の兄の下、男気ある筋を通す男に成長した。

 今年、選手会長就任とともに、やや長めだった髪を刈り上げ、伸ばしていたあごひげも剃った。「あまり意識はしていないけど、一応ね。30(歳)にもなったし」と笑って、多くを語ろうとはしない。ただ、模範とならなければいけない使命感が自然とそうさせたのだろう。

 やんちゃだった学生時代から、強気な性格だった。プロでもそれは変わらない。ベテラン選手から一目置かれ、若い選手の兄貴分。チームの中心選手である"タナキクマル(田中広輔、菊池涼介、丸佳浩"にも、厳しい言葉をかけることができる存在。

 とくに今季の広島は、打高投低の色が濃くなっただけに、捕手の會澤が選手会長として投打の間に立っていたことが幸いした。

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