「そんなものに負けてたまるか」
西武の石毛宏典はID野球に反発した

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――この年の日本シリーズで印象に残っているシーンはありますか?

石毛 第7戦のタケ(石井丈裕)が打席に入った場面かな。

――3勝3敗で迎えた第7戦。7回表、2アウト1、2塁で得点は0-1のビハインド。ヤクルトのマウンドには好投を続ける岡林投手。この場面で打席に立ったのは石井丈裕投手でしたが、西武は代打策を取りませんでしたね。

石毛 あの年のタケちゃんは本当に頑張っていたんだよね。タケが打席に入る前に彼を呼んで、「いいか、お前がバットを振っても絶対に当たらない。いいか、絶対に振るなよ。バットをボールにぶつければいいんだ。いいか、振るなよ、ぶつけろよ!」と言って、ものすごい声援を送ったんです。

――当時の試合映像には、メガホンを持って叫んでいる石毛さんの姿が映っています。

石毛 それで、タケちゃんが見事にぶつけてくれて、打球はセンターの飯田(哲也)の頭上を越えた。あれは飯田なら捕れた打球だったと思うんだけど、彼も舐めていたのかもしれない。この一打が同点打となって、延長戦で勝って日本一になった。あのヒットは本当に嬉しかったし、最高だったよ。

(後編に続く)

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