終盤戦で全員好調は逆に不安。打撃不振はティーバッティングが処方箋 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

 ただ理想を言えば、今回の広島のように主力が揃って不振になることは避けたい。3年前に優勝したヤクルトのように、バレンティンがダメでも山田哲人がいいとか、山田が下降気味でも雄平の調子が上向いてきたとか、誰かがカバーしている状態なら著しく得点力が下がることはない。

 コーチとしては、こうした状態が一番ありがたい。むしろ、チーム全員が好調という方が怖い。みんなが好調ということは、不調になるタイミングも重なる。それがCSや日本シリーズといった短期決戦に当たってしまったら、目も当てられない。

 そこで打撃コーチといのは、打者の様子をひとりひとり見ながら、どの選手がどの程度の状態なのかを把握しておかなくてはならない。「この選手は、あと3カードぐらいは打てる」「この選手はそろそろ危ない」などを見極めなければならない。

 見るポイントというのは選手によってさまざまだ。タイミングが早くなっている者、腰の開きが早くなっている者、バットの出が鈍くなっている者......。打撃コーチというのはそれぞれの症状に対して、処方箋を出してあげられる"引き出し"を持っていなくてはならない。

 コーチ時代、私はティーバッティングを最重要視していた。試合前、バックネットのそばでコーチがトスをして、そのボールを選手が打っている場面を見たことある人は多いだろう。チームによっては、ただフリーバッティングの順番が回ってくるまでの時間つぶしにしか考えていないところもあるが、ティーバンティングだけで打者の状態が把握でき、欠点を修正することができるのだ。

 打者というのは、それぞれに"打てるポイント"というのがある。ところが疲れがたまり、相手も対戦を重ねることで攻め方を変えてきたりすると、微妙にフォームが崩れてくる。そうなるとスムーズな軌道でバットが出てこなくなり、本来打てるはずの球が打てなくなる。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る