逆転優勝を狙うホークス。好調な千賀と石川を支えるトレーナーの教え (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 そんな千賀があえてライバル視する石川柊太(しゅうた)は、今季5年目の右腕である。昨シーズンに彗星のごとく現れて8勝をマークすると、今季は自身初の2ケタ勝利を飾った。10勝到達は千賀よりも1日早く、チーム一番乗りだった。夏以降は中継ぎに回っているものの、工藤公康監督からは「とくに前半戦の投手陣ではMVP的存在」と評された。

 このふたりは、ともに育成ドラフトから這い上がってきたという意味で境遇が似ている。ただ、意識する理由はそれだけではない。

 彼らはオフの期間、一緒に自主トレを行なう仲間でもあるのだ。もともと千賀が、プロ1年目のオフから通う合宿に石川を誘ったのがきっかけだった。

 その自主トレ合宿を主宰するのが「鴻江スポーツアカデミー」代表でアスリートコンサルタントの鴻江寿治(こうのえ・ひさお)氏である。

 鴻江氏はさまざまな施術やトレーニングのノウハウから"鴻江理論"を確立し、それに基づいた"骨幹理論"を提唱。人間の体は、うで体(猫背型)とあし体(反り腰型)に分かれており、それぞれに合った体の使い方をすることでパフォーマンスが上がるというのだ。

 鴻江氏は千賀について、「あし体の代表例」と説明する。

 たとえば、千賀は走者がいない場面でもセットポジションから投げる。あし体は下半身から始動してタイミングを取る方が、スムーズに体が動くのである。

「右かかとで"ポン"とリズムをつくってから、左足を上げるのはそのためです」

 鴻江氏が最初に千賀に出会った時は、まだ背番号128の育成選手だった。あの当時は大きく振りかぶって投げるワインドアップ投法だった。鴻江氏の理論に基づけば、上半身始動のそのフォームは、「あし体」ではなく「うで体」タイプに合う体の使い方だった。

「(千賀に)あし体の基礎的な投げ方を教えていくと、私も驚くほどの速さで成長を遂げていきました」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る