元日本ハムの優良助っ人クルーズ、Youはなぜ台湾代表のコーチに? (3ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 ちなみにこのリーグは、中南米のウインターリーグの決勝シリーズ、カリビアンシリーズも2連覇している。

 しかし、カリビアンシリーズやWBCで好成績を残しているにもかかわらず、プエルトリコの野球が全盛を迎えているとは言い難い。WBCに出場した選手のほとんどはメジャーリーガーで、プエルトリコで生活することはほとんどなく、ウインターリーグでプレーすることもない。

 年々リーグのレベルは低下し、かつての6球団制から5球団制となり、レギュラーシーズンとチャンピオンシップを合わせても3週間ほどで終わるなど、ミニリーグになってしまった。

 それもこれも、プエルトリコが国ではなく、自治領とは名ばかりのアメリカ合衆国の辺境であることに起因する。

 アメリカのパスポートを持つこの島の住人の多くは、衰退するサトウキビ産業とカジノぐらいしか仕事のない島に見切りをつけ、アメリカ本土に出稼ぎに出る。そして移住先でコミュニティーをつくり、生活にめどが立つと、両親を呼び寄せる。

 野球選手だってそうだ。本土で成功を収めるとフロリダに豪邸を建て、もはやプエルトリコには戻ってこない。

 そんななか、クルーズ家は出世頭の長男・ホセと、日本で成功を収めたトミーは豪邸を建てて故郷に錦を飾ったが、三男のヘクターはホセのように余生を送るのに十分な貯えがあるわけでもなく、トミーのように野球の仕事に就けるわけでもなく、現在はシカゴで郵便配達員をしている。また、ホセの息子でメジャー204本塁打を放ったホセJrは、ご多分にもれずフロリダで過ごしている。

 トミーも長らく母国リーグのコーチ職についていない。その理由を尋ねると、現在プエルトリコが抱える問題と無関係ではなかった。トミーは言う。

「もうあの島は危なくて仕方ないんだ。ナイターのあと、車で帰宅するなんて、物騒でできないよ」

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