2018.09.10

元日本ハムの優良助っ人クルーズ、
Youはなぜ台湾代表のコーチに?

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 故郷のアローヨという町では、メジャーで2000本安打を記録した兄のホセ、巨人でもプレーした弟のヘクターとともに"クルーズ3兄弟"として英雄視されている。

 そのアローヨにある彼の豪邸を訪れたのは、もう10年ほど前のことだ。1階には吹き抜けのホールがあり、そこには日本での思い出の品々がところ狭しと展示されていた。

 そんな彼も60歳を超えた頃には、ウインターリーグのメンバー表に名前を見なくなり、余生をあの御殿で過ごしているものだと思っていた。

 そんな彼についてのニュースを目にしたのは2年前のことだった。台湾プロ野球の名門・中信ブラザーズの打撃コーチに就任したとの報道があった。会いに行こうかと思いつつも時間だけが過ぎてしまったが、今回アジア大会の取材でジャカルタに来ると、偶然、彼の名前を目にしたのだった。

「しばらく見なかったな。今日はスカウトかい? 台湾にはいい選手がいっぱいいるよ」

 久しぶりに握った手は、今でもバットを振り込んでいるのだろう、相変わらずゴツゴツしていた。10年前に会った時もトレーニングを欠かさないと言っていたが、現役当時よりもずいぶん恰幅はよくなっているものの、67歳になった今も体を動かしているのはわかる。

 台湾に来て3年目。今シーズンは富邦ガーディアンズのコーチとして開幕を迎えたが、前期シーズン限りでナショナルチームに転籍となった。

 そして今回、台湾代表のコーチとしてジャカルタに来ていたのだ。「熱帯の気候はプエルトリコと似ていいだろう」と話を向けると、首を横に振り、こう返してきた。

「いやいや、プエルトリコの方がよほどいいよ。オレはあの島が大好きなんだ」

 彼の故郷、プエルトリコは言わずと知れた野球強豪国のひとつだ。世界最高峰の大会、WBCでは2大会連続で決勝にコマを進めている。自前のプロリーグもあり、最近では松坂大輔(現・中日)がプエルトリコのウインターリーグでプレーしたことで、その存在を知っている人も多いだろう。