記録的最下位からCS進出へ。ヤクルトを変えた青木宣親の献身力 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「(開幕から)打てない日が続いたのは、日本とアメリカではまったくピッチャーのタイプが違うなかで、頭ではわかっていても体がうまく反応しないというか......6月あたりから結果はついてきたけど、まだまだ"それ"を意識しないと打てない感じですね。無意識に反応して打てるようにならないとダメなんですが、すぐには変われないので。今の感じでこのままいければいいと思っています」

 7年ぶりに日本球界に復帰した青木に聞いてみたいことがあった。「野球」と「ベースボール」の違いはいろんなところで語られているが、チームとして見たときに日本とアメリカに違いはあるのだろうか、ということだ。

「違いますね。一概にどっちが正解という考えはないけど、まったく違うと思います。日本にもアメリカにもいいところがあり、『これはどうかな』と思うこともそれぞれにある。日本は"組織"をすごく大事にして、団体で動く。ここはすごくいいなと思うところなんですが、だからこそアメリカのようにもう少し"個"の部分も大事にした方がいいのかなと思う部分もあります。そのバランスですよね」

 今シーズン、青木は前述したように選手としての立場をわきまえながら、「日本とアメリカのいいところ......組織と個をうまく融合させて、新しい日本流ができればいい」とやってきた。その成果は出ているのだろうか。

「全体ミーティングで"みんな"に向けて話すことは少なくなりました。チームとして前向きにいこうという感じが出ているし、結果も出ていますから。どちらかといえば"個別"に話していることの方が、今は多くなっています」

 9月5日の中日戦(神宮)。4点ビハインドの6回裏、ヤクルトは青木の3ランと雄平の2ランで逆転勝利を飾った(前日は9回裏に6点差を追いつき、延長11回裏に上田剛史のサヨナラ3ランで劇的勝利)。試合後の囲み取材で、CSに関する質問に青木はこう答えた。

「まだカープの優勝も決まってないわけですから。とにかく目の前の試合を勝つだけです」

 青木はバットマンとしての"数字"よりも大きなものを、チームにもたらしているのだった。

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