絶妙な投球術が味方に好影響。ボルシンガーはゴロでゲームを支配する (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

―― 球速を落として投げることに怖さはないですか。

「そこが大事なところですからね。怖くはないですよ。自分は変化球でストライクが取れるのでストレートも生きますし、それも自然に動くので、それが利点になっているところはあると思います」

 こうして投球術を駆使し、ゴロアウトの山を築く"グラウンドボール・ピッチャー"は守備だけでなく、攻撃にもリズムをつくり出している。

 鈴木大地が「テンポよくアウトを取って投げてくれるので、攻撃のリズムはよくなります」と言えば、中村奨吾も「攻撃と守備のリズムがよくなって、いい影響が出ていると思います」と続く。

「ゴロが多いと内野手の足も動きますし、守備で失点したとしても、マイクはだらだらせずにテンポよく投げてくれるので、守っていても『よし、次の回で反撃だ』という気持ちになれるんです」(中村)

 開幕からショートを守り続けるルーキーの藤岡裕大も「マイクはボール球も多くありますが、投球間隔が短いのでリズムがつくれるんですよね。なので、野手はいい感じで打席に入れていると思います」と語る。

 藤岡は先述した6月2日の広島戦で、実に8個のショートゴロをアウトにしたのだった。

「さすがに1試合8つは多いですね(笑)。だいたい1試合で3個から4個ぐらい......。そういう意味で、マイクのときはいつも以上に緊張感を持って準備をしています。打球が飛んできそうな雰囲気をかなり感じます」

 ボルシンガーが投げればチームの4番が打つ――今シーズン、井上晴哉はボルシンガーの登板した試合で打率.315、7本塁打、19打点の好成績を残している。井上は言う。

「野球のプレーでいったら、ゴロアウトの方がリズムをつくりやすいですよね。守るときも、ゴロが多くなるだろうと計算できますし、ホームランを打たれるプレッシャーも少ない。リズムよく試合に入っていけるので、それがバッティングにもつながっています」

 ちなみに、ボルシンガーが登板したときの内野陣の失策数はわずか4個で、援護率()5.52はリーグ2位の数字である。
※援護率とは、投手がどれだけ打線の援護を受けたかを示す指標で、その投手の登板中に味方打線が挙げた得点を9イニングあたりで示したもの

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