菊池雄星が好例。現代野球は「データリテラシー」が重要になる (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 オープン戦の時期の寝違えで調整が遅れた今季序盤、ストレートとスライダーを思うように操れないなか、頼りになったのがカーブだった。球種の掛け合わせは実に興味深く、カーブを最大限に活かすため、ストレートの質をあえて理想より下にとどめていた。

「どのピッチャーもそうだと思うんですけど、僕の場合はカーブの腕の位置は真っすぐより3センチくらい上がります。今年はカーブで抑えていた試合が多かったので、(使える球種から)消えるのが嫌で、(側屈角を)変えませんでした。でも昨日(22日のロッテ戦)の6、7回に投げた感じだと、真っすぐもカーブもきれいに投げられました」

 一般的に、カーブは親指と中指(人差し指は中指に添えるイメージ)の間から抜きながら縦回転をかけるため、腕を上から振るような感覚で投げる。その角度が下がると、変化量が落ちて甘い球になりやすい。そのリスクを避けるため、菊池はストレートの質にはある程度、目をつぶっていた。

 しかし、5月上旬から二軍で調整してコンディションや感覚が上向き、6月1日に一軍昇格後は理想の投げ方ができるようになってきた。そこで、今はカーブを改良し、勝負球にも使えるようにしたいと目論んでいる。

「カーブって紙一重の球です。ランナー三塁でバットに当てられてしまうと、サード線にコンコンコンって転がって1点とかもありますから。そういうリスクが一番少ないのは空振りなので、それを取れるところまで持っていきたい。

 本当はナックルカーブみたいに(人差し指で)弾けばスピンも効いて速くなるんでしょうけど、今はいい感覚なので握りを変えるのは難しい。カウントを取るときはゆっくり、三振を取るときは思い切り振るという感じで投げているので、常に思い切り振る感覚にしていければ空振りをとれると思います」

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