「お前ら負け犬か」石井コーチの檄から
ヤクルトが王者になっちゃった

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 小川は3試合に先発して2勝0敗、防御率1.42。右ヒジ疲労骨折からの復活を強く印象づけた。またローテーションの谷間に先発した山中浩史は、勝敗こそつかなかったが、2試合で防御率1.80。相手の反撃を断つ粘りの投球は見事だった。

 そして先発が崩れたときに、ロングリリーフで試合を立て直したカラシティーをはじめとする2番手投手の存在も大きかった。正捕手の中村は言う。

「とにかく粘ろうとリードしました。失点しても、ピッチャーには『ここから粘っていこう。気持ちを切り替えて、仕切り直しだ』と。投手陣がそのことをしっかり意識して、気持ちを込めて投げてくれました」

 野口寿浩バッテリーコーチは「交流戦という短期決戦で、中村も投手陣も攻めていくことができた。それがいちばん大きかったですね」と振り返る。

「相手の嫌がるところを徹底的に攻めていこうと。ただ、これは非常に難しいことで、苦手なところを攻め続けたからといって100%抑えられるわけではありません。たとえば、インコースが苦手なバッターに対して、その日のピッチャーのコンディションを考えると、そこを突ける状態ではないこともある。その局面になったときに、強引にインコースで攻めるのか、それとも違う攻め方を考えるのか。そこを中村はうまくリードしてくれました」

■6月12~14日/西武戦(県営大宮、メットライフドーム)/2勝1敗

 2戦目の練習前、投手・野手が揃ってのアップのときだった。カラシティーが「ゲンキダシテ!」と音頭をとると、選手たちは一斉に「オーッ!」と応え、次に雄平が「元気出して!」と声を張り上げると、シーンと沈黙し、その後、笑い声が起きた。

 そんな雰囲気のなか、パ・リーグ首位の西武に対しても2勝1敗と勝ち越し。3戦目は2点ビハインドの8回に追いつき、9回に逆転という粘りの野球を披露。チームの底力を感じさせた勝利だった。

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