2018.05.31

【イップスの深層】あの名手が送球難を
ごまかした「偽装工作」を告白

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 一方、外国人のファーストは土橋に言わせると「『捕ってナンボ』の発想がある」という。

「こっちがショートバウンドを投げたのに、『わりぃ、俺が捕れなかった』と言ってくれるんです。投げた方としては精神的に救われますよね。だからどんなに動けない(守備範囲が狭い)選手でも『その分は俺がカバーする!』と思えましたよ(笑)」

 オマリーもペタジーニも守備範囲は狭かった。だが、土橋は「送球を捕ってくれさえすればいい」と思っていたという。

 土橋は引退後、少年向けの野球教室に呼ばれると、必ずこんな話をするそうだ。

「投げる選手より捕る選手が大事なんだ。投げる選手はいいときもあれば悪いときもある。それを捕る選手がいかに助けられるか。投げた選手が『やっちゃった!』という球をさりげなく捕って、『助かった』と感謝される。そんな選手になってください」

 こうして土橋は20年に及ぶ現役生活を「職人」というイメージを崩すことなく全うした。

 送球難に苦しみ、あの手この手でひた隠しにしたプロ野球人生だった。それでもいま、土橋は自身を「イップスではなかったと思う」と総括する。その理由は次回に解き明かしていこう。

(つづく)


※「イップス」とは
野球における「イップス」とは、主に投げる動作について使われる言葉。症状は個人差があるが、もともとボールをコントロールできていたプレーヤーが、自分の思うように投げられなくなってしまうことを指す。症状が悪化すると、投球動作そのものが変質してしまうケースもある。もともとはゴルフ競技で使われていた言葉だったが、今やイップスの存在は野球や他スポーツでも市民権を得た感がある。
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