マギーが「一生の宝物」という腕時計。今も忘れ得ぬ闘将との熱い日々 (2ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 しかし昨年、巨人と契約したマギーは、春のキャンプで星野と再会を果たした。マギーは「正直、緊張していました」と言って、こう続けた。

「星野さんにとって巨人は生涯のライバル。そのチーム私が契約したことで、星野さんは怒っているんじゃないかと......」

 もちろん、怒っているはずもなく、会えばなごやかな雰囲気となったが、実はマギーは本当に星野監督を恐れていたときがあった。それは楽天と契約し、AJ、斎藤隆とともに仙台で会見を開いたときのことだ。そのときマギーは「この契約は失敗だったかも......」と思ったと言う。そのきっかけとなったのは、星野監督会うのに斎藤隆がすごく緊張していたからだった。

「斎藤さんは日本でも実績があるし、メジャーでも成功した選手です。当然、星野監督がいる部屋に真っ先に入るものだと思っていました。そしたら斎藤さんが『先に入って』と、緊張した表情で僕らに言ってくるんです。『なぜ?』と思ったと同時に、星野監督ってどれだけ怖い人だろうと......。

 実際に会うと、オーラはすごかったけど、ビジネスライクだったから、そのときは何も思いませんでした。ただホテルに戻り、インターネットや動画で検索すると、とんでもない人だと(笑)。審判に殴りかかろうとしたり、相手選手に激怒したり......。とにかく迫力のある映像ばかりで、なぜこんな人が私をチームに呼んだんだと......不安しかありませんでした」

 それでも、マギーの不安はすぐに解消された。春季キャンプ初日、選手たちは特別のランニングメニューが組まれていた。マギーもそのメニューを消化しようとすると、誰かがマギーの肩に手を置いた。慌てて振り返ると、星野監督が立っていて、マギーとA・Jにこう言った。

「自分の判断で、もう十分に走ったと思ったら、それ以上はしなくていいぞ」

 そしてマギーには、もうひとつ忘れられない瞬間がある。ある日のこと、ひとりでいたマギーに星野監督が歩み寄り、英語でこう言った。

「お前たちの話していることは、全部わかっているんだぞ(笑)」

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