もうパンダじゃない。「客寄せ松坂大輔」、
熟練の投球にファン大熱狂

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

「逆転できる雰囲気を作りたいという気持ちはありました。そういう意味ではあの声援はありがたかったですね。打たれながら、フォアボール出しながらでハラハラさせてしまいましたけど、ここは絶対に抑えなきゃいけないところで、どうなんだ、どうなんだと思わせておいて抑えるというのは、リードされている展開ではいい終わり方だと思います。雰囲気が後押ししてくれるということで、自分のミス(4回、ピッチャーゴロを弾いて塁に出した西岡を福留のダブルプレーの間に生還させてしまい、結果、この1点が決勝点となった)から失った流れを取り戻せたらいいな、という気持ちはありましたね」

 最後は上本を空振りの三振に仕留めて、松坂は右拳を強く握り、グラブをポーンと叩いた。ドラゴンズのユニフォームを着てから初めてのガッツポーズに、スタンドのボルテージはマックスまで跳ね上がる。プロ20年目、37歳の松坂が投げた123球には、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた技術の"粋"が詰まっていた。

 4月5日のジャイアンツ戦で96球を投げ、中12けたこの日のタイガース戦で123球を投げた。怖かった反動もなく、現時点で次回は中10けての4月30日、ベイスターズ戦での先発が予定されている。

「自分の中ではバテたという感覚はなかったので、もう一段階、投げられる状態としては上がってきたのかもしれないですね。中6日でけと言われたら、いけると思います。(森繁和)監督からも『いずれは中6日で回ってもらうときが来るから、いけるのかどうかだけ確認しておいてくれないか』と言われてますし、僕ももう少し暖かくなってきて、日程的に必要な時期が来たらそれでいくつもりでやってますから......僕は僕のことをフルで使い回してほしいんです。チームとして、使えるだけ使いたいと思ってもらえるような、そんな状態にできたらいいなと思ってます」

 どこかでいたわるように、半ば遠慮しながら、しかも半信半疑で見つめていた目が、確かに変わり始めている。どうせ客寄せパンダだという声を松坂が聞き流すことができていたのは、肩が痛くなければ投げられる、投げられればバッターを抑えられる、抑えられれば勝てるという、揺らぐことのない自信があったからだ。そしてここまで、ドラゴンズの松坂は投げられているし、バッターを抑えられている。あとは、勝つだけ──その瞬間は、そんなに遠くはないはずだ。

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