マジだったのか!「今季ヤクルトはスモールベースボール」の徹底力 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 今シーズン、ヤクルトの犠打は20個でリーグ最多を記録している(4月15日現在)。失敗は一度しかなく、ほとんどのバントが見事な転がりを見せている。4月7日の巨人戦(神宮球場)では5つの犠打を成功させ(うち1つは野選)、4つが得点に絡むなど、チームはスモールベースボールで15得点を挙げ勝利した。

 宮出コーチは言う。

「スモールベースボールとバントは切り離せないですからね。いいところに転がればヒットにもなるし、相手の悪送球だってあります。バントって、いろんな意味でゲームを支配するので、決めるところでしっかり成功させないと相手に流れを持っていかれます。

 今のバント練習は去年のシーズン中盤ぐらいから取り組んでいて、あの短い距離から強いボールを投げているので、体感では150キロから160キロぐらいあると思います。あの練習は、選手たちが気持ち的に楽に打席に入れる環境づくりが狙いです。最初はある選手の特別メニューでしたが、今はほかの選手からも『投げてください』とリクエストがきます。ピッチャーの石川(雅規)も自分からお願いにきましたから」

 その石川に、至近距離からのバント練習に自ら参加した意図を聞いた。

「僕らピッチャーは、そういう場面できっちり送ることが重要になります。それがチームにとっても自分にとってもプラスになりますし、しかも今年は1番に山田(哲人)がいますからね。それにしても宮出コーチの球は速いです(笑)。本当に怖いんですけど、あれをやっておくとゲームでも自信を持って打席に入れる。ほかのピッチャーたちもやったらいいと思います」

 宮出コーチはバント練習中、選手たちに「一発で決めろよ!」と厳しい口調で何度も繰り返す。

「追い込まれてからのバントは難しいですし、野球って見えない流れがありますからね。一発で決めると、次の打者も『さあ、行くぞ』という流れができる。先制点は試合を優位に進める上で大事ですし」

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