ローテ死守の葛藤を超えて...。DeNA井納翔一「優勝への配置転換」 (2ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu
  • 小池義弘●撮影 photo by Koike Yoshihiro

「僕だってラミレス監督になって最初の年の秋季キャンプでは開幕投手をやりたいって気持ちもありましたよ。山口俊になりましたけど。ところが、オープン戦で俊がケガして、僕に開幕投手が回ってきた。結果はDeNAになって初、ベイスターズとしても13年ぶりの開幕勝利となりました。なんというか、いろいろそういうのは持っているんですかね。でも正直エースへの執着心はあまりないですね(笑)」

 エースという肩書には執着しない。プロはローテで投げるそれぞれがエースであるべきだという考え。投げた試合で味方に勝てると思われる投手を目指したいという。目に見える肩書ではなく、フィーリング。それが井納にとっては肝要なのだ。

「ただ、毎年開幕候補に入っていないということは、ローテーションも確約されていない立場でもある。僕ももう6年目になりますけど。すべてにおいて、もう一度気持ちを入れ替える。そのために、ローテーションを取りにいくことからスタートしたいと思っていたんです」

 そんなオフに届いた報せ。自主トレ中の1月10日、NPBは二段モーション解禁を発表する。それを聞いた瞬間から井納は二段モーションの練習を始めた。それは「何かを変えなければ」という危機意識の表れでもあった。

「まずはフォームでした。いきなりというわけではないですよ。もともと昨年あたりからキャッチボールでも、投げる途中に一度止まってタメを作ってから投げることはやっていたんです。僕のフォームは振りかぶった時に左足を勢いよく上げるクセがあったので、その足の勢いを止める感覚にしたら、自然と2段になっていた。だから違和感なくすんなりと入っていけました。ゆったりと投げられていますね。うん」

 32歳となる今年は、投手陣でも上から数えて3番目。先発投手陣では最年長となった。これまでも不可思議な言動から"宇宙人"と呼ばれてきたこの男が、かつての三浦大輔と同じ投手陣での立場となる。井納32歳、何を思う。

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