名コーチ怒る!「注目ルーキーの敵は、打撃ケージに群がる評論家だ」 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 たとえば、キャンプで打者に1回30分ほどのフリー打撃をさせることがある。30分ぶっ続けで打てば、下半身はガタガタになり、筋肉も張ってくる。そんな練習をキャンプ中に最低3回取り入れることで、下半身でバットを振る体力、感覚が身につく。

 特に金属バットで育った高卒の選手は、上半身に頼ったバッティングだったため、下半身が"プロ"のそれになっていない。そんなときに評論家がきて、「下半身が使えていない」などと言ったところで意味がないのだ。
 
 だが実際には、こうした空気の読めない評論家のアドバイスによって、スイングを狂わされる選手は多い。そういう私も評論家のひとりだが、仕事として技術論評はしても、直接、選手に口を出すことは一切ない。

 このような評論家の無責任なアドバイスは論外としても、チーム内でもコーチによって考え方、指導法が違うことがある。今は打撃コーチでも2人体制のチームが多く、それぞれが自分のやり方で指導しようとする。これも選手にとっては、大変不幸な話だ。

 では、どうやって若い選手を伸ばしていったらいいのか。私は"コーチ専任制"が大事だと思っている。一軍には12~13人の野手がいるが、そのうち強化指定の若手はせいぜい2~3人。だから、どのコーチが1年間、誰を指導するか決めるのだ。そしてほかのコーチは横から口を出さない。意見があれば、監督やヘッドコーチを交えたコーチミーティングで意見を言い合い、合議していく。そうすれば具体的な日々の指導も理解しあえるのではないだろうか。なにより、選手は混乱することなく、落ち着いて練習に取り組むことができるはずだ。

 こうしたやり方は、何も特別なことではない。若い選手が台頭してくるチームは、実質的にひとりが担当して指導しているものだ。選手の能力を伸ばすということは決して容易ではない。だからこそ、指導する側はシンプルに接してやることが必要になるのではないだろうか。

 いずれにしても、評論家たちがバッティングケージの周りに集まり、注目の若手選手をつかまえ始めたら要注意だ。それだけは何としても阻止しなければ......。

(つづく)

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