2018.04.04

名コーチ怒る!「注目ルーキーの敵は、
打撃ケージに群がる評論家だ」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 逆に安田は、キャンプ早々からフォーム修正に取り組んでいた。新任の金森栄治コーチならではの、体を鋭く回転させコンパクトにバットを出すスイングを繰り返していた。ただ、このスイングはアベレージヒッターには適しているが、長距離タイプには向かないように思う。案の定と言ったら失礼だが、安田のスイングは小さくなり、高校時代に見せていた懐の深さは影を潜めてしまっていた。本来のスイング、フォームを見直す意味でも、二軍で鍛え直すことはいいことだと思う。

 同じ高卒のスラッガーとしては、なんとも対照的な指導に思えたが、どちらが正しいかは簡単には言及できない。球団の指導方針もあるだろうし、外部の者が口を挟むべきことではない。いずれにしても、すべては預かっているコーチの責任になるのだ。

 古い話で恐縮だが、私がヤクルトの打撃コーチをしていたとき、ひとりのスーパースターが入団してきた。長嶋一茂である。私の役割は、彼を一人前の打者に育て上げることだった。

 ところが、一茂はミスター(長嶋茂雄氏)の息子ということで、キャンプ、シーズン中を問わず、多くの評論家が彼に助言をする。

 ある年のキャンプでは、ある有名評論家が臨時コーチとして招かれた。だが、その評論家は2週間ほどして「こりゃダメだ」と言って帰っていった。勝手にいじられ、挙句の果てに放り出す。コーチの私としてはどうしたらいいのか……呆れるやら、腹が立つやら、やりきれない気持ちになったことを今でも覚えている。

 臨時コーチでなくても、評論家のなかに”にわか指導者”がいるのは日常茶飯事である。これは選手にとって、とても迷惑なことだ。来る人来る人、言うことが違い、なかには目の前でやってみろと指図する評論家もいる。そもそも、わずか数分見ただけで、何がわかるというのか。もちろん、指摘するポイントが正しいこともあるが、若い選手、特に高卒の選手の場合、指導するにも段階というものがある。