「井の中の蛙」だった菊池雄星。残されたハードルを越えてメジャーへ (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 小池義弘●撮影 photo by Koike Yoshihiro

「そこはまったく意識になかったんです。どちらかと言えば、新しいトレーニングを学びにいこうという感覚で行ったんです。でも結果的に一番、ハングリーな部分がめちゃくちゃ刺激を受けました。各チームの4番やエースの集まりのなかに入れてもらったら、そいつらが朝からめちゃくちゃ練習するんですよ。『あいつより重いものを持ち上げてやる』と競い合っているのを見て、『すげえな』って。自分は『井の中の蛙(かわず)』だったなって」

 2009年のドラフトで6球団が1位指名した「金の卵」は、孵化するまでにそれなりの時間を要した。3歳下の後輩・大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)が日本ハム時代の2015年に最多勝&最優秀防御率を獲得するなか、「自分は不器用」と自覚し、長期計画で地道な努力を積み重ねた。そうして2017年、投手二冠に輝いて球界ナンバーワン左腕と認められるようになったシーズンのオフ、「井の中の蛙」だったと自覚できたことにワクワクしているのだ。

 花巻東高校時代からメジャーリーグへの夢を抱いてきた左腕にとって、"そのとき"がいよいよ近づいている。もしかすると、今季が日本でのラストイヤーになるかもしれない。

 だが、井の中にいる蛙は大海原に飛び出す前に、乗り越えるべきハードルがある。大きな飛躍を果たした昨季、やり残したことがある。

「やっぱり誰からも言われることですけど、"そこ"ですよね。"そこ"に関して、それが5位のチームでもなく6位のチームでもなく、毎年日本一を狙えるチームに勝てないというところは、僕のなかですごく大きな課題というか。"そこ"に勝てないかぎり、チームとしても優勝できないし、僕としてもまだまだエースとして認めてもらえない」

 プロ入り8年間で、ソフトバンクと17度対戦して0勝12敗。投手として絶対的な力を身につけた昨季でさえ、4度すべて返り討ちにあった。とりわけ福岡では、6月23日が2イニング3分の1、8月24日が3イニングで、ともに7失点を喫して降板している。

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