各球団スカウトが「獲り逃がした!」と悔しがるDeNA2年目の正体 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 それでも投球練習での京山のボールは、捕手のミットに突き刺さるように力強く、明らかに"モノが違う"と確信した。

 ただ、強力打線が勢いに乗ったところで慌ててマウンドに向かったのだから分が悪い。結局、相手の勢いを止めることができず、6イニングを投げて本塁打を含む10安打、6失点と、甲子園はホロ苦い結果となった。

 それでも京山の能力を高く評価するスカウトは多かった。当時、別のスカウトはこう京山を評価していた。

「タイプでいえば、西口文也(現・西武コーチ)ですね。ボールにキレがあり、とにかく腕の振りが素晴らしい」

 西口といえば、細身の体ながらプロ通算182勝を挙げ、最多勝、奪三振王に輝き、投手の最高栄誉である沢村賞も受賞するなど、一時代を築いた西武の大エースである。

 その西口のように、高校時代の京山も細かった。プロに進んでも一軍で主力になれるのは3年目、もしくは4年目あたり......まずは体力づくりの日々が続くのだろうと勝手に思い込んでいた。

 ところが、京山は1年目からイースタンリーグのローテーション投手として活躍。終わってみれば16試合(99回1/3)に登板し6勝6敗、防御率4.17。"フレッシュオールスター"では1イニングを3人で退け、シーズンオフに行なわれた"アジア・ウインターリーグ・ベースボール"でも決勝戦で2イニングをピシャリと抑えて、先発の大役を果たした。

 正直、1年目からここまでの実戦経験を積めると思ってもみなかった。

 昨シーズン、イースタンリーグでの京山のピッチングを一度だけ見た。巨人相手に6回を投げて2安打、1失点。低めを突ける指先の感覚と球持ちの良さは相変わらず非凡なものを見せてくれたが、この日は「抑えてやろう!」という負けん気の方が前に出てしまい、京山にしては珍しく高めに抜ける球があり、ワイルドピッチまであった。

 それでも、細くて長い右腕から渾身の力で振り抜かれたボールのスピードと運動量は、打者に恐怖心を与えるには十分の迫力があった。その姿、そのボールの軌道は、まさに"西口文也"だ。

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