松坂大輔「去年の10月、ある施設で
先生が肩をはめてくれたんです」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

── 野球の神様がギリギリ、間に合わせてくれたということなのでしょうか。

松坂 それは捉え方次第ですけどね。やっぱり両方ありますよ。もうちょっと早ければというのもあるし、あの時点で投げられるようになったからこそ、このオフ、いくつかの球団の人から「どうだ」と言ってもらったときに「投げられます」って言えたという面もある。結果、僕はドラゴンズに来られたわけですから、最終的には間に合ったって思うべきなのかもしれませんね。

── 「まだやめちゃいかんよ」という、野球の神様からのメッセージなんじゃないですか。

松坂 まだ運が残っていたのかなとは思います。ただ、こういうことだったのかなって思うのは、まだ先なんじゃないですか。まだ先であってほしいし、むしろ、ずっと先であってほしいという気持ちが強いですね。

── ドラゴンズにきたとき、まるで「ここが死に場所だ」みたいな言われ方をしていましたが、そういう気持ちもあるんですか。

松坂 僕はまだ終わるつもりはないですね。まだまだ野球を続けたいと思ってるし、ここで死ぬつもりでは来てないですよ。周りがどう見ようが、どう考えようが、それは周りの人の見方、考え方なので、そこはお好きなようにということで(笑)。

── 投げられなくてつらかった時期、野球をやめようと何度か考えたという話を以前、聞いたことがあります。今、あらためて、野球をやめなかった理由は何だと思いますか。

松坂 大好きで始めた野球、ずっと続けてきた野球を、ケガをして投げられないまま、あきらめることをしたくなかった、ということに尽きると思います。あきらめようと思えば簡単でした。「僕、やめます」って言えばいいだけだし、「戦力外になりました」ってそのまま何もアクションを起こさなければ、それでおしまいでした。

 ただ、このまま終わったら、間違いなく後悔しながら生活していくんだろうなとは思いました。それでスッキリするはずがないし、野球のことを忘れるなんて、できっこない。このままあきらめたら絶対に後悔すると考えたら、野球をやめることはできませんでした。

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